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六話 妖怪と人間の関係

 平蔵爺さんを連れて帰るという妹紅と別れ、永琳さんに連れられて俺はかぐやという人物の下へ。最後まで妹紅はアイツには気を許すな、注意しろと忠告していたのだが……何故にそこまで。
 喧嘩でもしてんのか? にしては、少々言いすぎな気もする。

「姫、おられますか?」

「えいり~ん? いるけどー?」

 気が抜けた声が障子の向こうから聞こえる。暇だから気が抜けてるのか、それとも何もないから気が抜けてるのか。や、どっちも同じ意味か。

「入りますよ」

 すっと障子を開ける永琳さん。視線の先には着物を着た少女が一人、机の上に肘をつき手に顎を乗せてぼーっとしていた。その目がこっちを捉える。
 永琳さん、そして俺へとシフトしていき目が少しだけ大きく開く。

「あら、誰?」

「外来人だそうです。幻想郷の観光が目的の」

「物好きな外来人がいたものね。自分の命が惜しくないの?」

 最後の一言は、俺へと向けられている。改めてこの少女を見ると、恐ろしくキレイなことがわかる。美人だとかそんなありきたりな表現じゃとても言い表せられない、それこそ絶世の美女と言っても過言ではないだろう。一瞬、見惚れるがそれはある種、魔的な美しさ。魅了チャームの魔術とほぼ同じだ。
 意識をしっかりと保たなければ、それに飲み込まれてしまう。

「……自分の身くらい、自分で守れるからな。そうじゃなきゃ、観光なんてしようと思わないさ」

 心を常に落ち着けることを心がけ、返答する。隣にいる永琳さんのふぅん、という頷きが聞こえたが無視。

「それもそうね。ねぇ、立ち話もなんだし、こっちにいらして? 殿方との語らいは久しぶりなのよ」

「悪いな、折角の美人のお誘いだが何分、こう見えて照れ屋なんだ。遠慮しておくよ」

 慣れるにはまだ多少時間がかかる。だが、慣れてしまえば普通の人間と変わらずに接することが出来るだろう。

「へぇ……私を前にして平常心でいられるの。ふふ、ありがとう永琳、退屈凌ぎが出来そうよ」

「私も少しだけ驚いてます。姫の色香に惑わされない男がまだいるなんて」

 む、やっぱりこれは魅了とか誘惑とかそういった類のものらしい。しかもそれを理解していて俺を引き合わせたのか永琳さんは。何気に性格悪いな。
 俺自身の対魔力はさほど高くないのだが、なんとかなったみたいで助かった。俺がデレッデレになったところをなんか想像するだけで気分が悪い。

「初めまして、私は蓬莱山輝夜。好きに呼んでいいわ」

「変な苗字だな。まぁ、んなこと言ったら幻想郷にいる奴ら全員似たりよったりか」

 俺のは極々平凡な苗字だし。その苗字に連なる一族は、反吐が出るほどにクソ野郎ばかりだ。多少の例外はあるにせよ。その例外が少なすぎる以上、クソ野郎の巣窟には違いない。

「ひどい言い草ね。にしても、私の名前を聞いても何も思わないの?」

「珍しい名前だな、とは思うが」

 そう答えると、あんまり有名じゃないのかしらという呟きが。一体何のことだ。

「かぐや姫の話を知らないの?」

「知ってる。自分がそうだって言いたいのか?」

「えぇ」

 ふむ。かぐや姫のモデル、というより話の本人か。月に帰ってはい終わり、じゃなかったんだな。昔話として受け止めていたが、実在したとは。俺たちの世界じゃどうか知らないが、ここでは立派に存在しているらしい。
 なるほど、絶世の美女と謳われて数多の貴族から求婚を受けただけのことはあるか。この色香、確かに生半可なもんじゃない。耐性がなけりゃ一発でベタ惚れだ。

「それなら魅了されかかったのも納得か。流石、幻想郷……侮れんな」

「……それだけ?」

「あぁ。そりゃかぐや姫と会ってる、なんて考えたら凄いとは思うが。でも、こちとらそういう存在は見慣れてるからな」

 何せ、衛宮邸には二人、水瀬家には一人の英霊が君臨なされているし。しかも騎士王に、戦神に、ゴルゴーン姉妹の三女。最後だけなんか一気にランクが下がったように見えるが、別にそんなことは無い。十分有名どころではあるし。
魔術師やってるとこういう神秘に出会うこともある。
 慣れる慣れないは別としてな。

「つまらないわねぇ。普通、男なら喜ぶものじゃない?」

「絶世の美女と謳われたかぐや姫だ。確かに喜ぶだろうな」

「貴方はそんな風に見えないけど……ふふ、いいわ。で、素敵な殿方である貴方のお名前は?」

「相沢祐一、平凡な名前だよ」

 本当に平凡ね、と呟かれる。余計なお世話だと思う。あまり個性的な名前にされるのも、正直厨二病みたいで嫌だが。しかし……妹紅は一体なんであそこまで注意しろと言ったんだ。確かに、さっきの魅了は危なかったが別段こっちに危害を加える様子はなさそうだし。

「あぁ、それと私のことは輝夜でいいわよ。別に姫様でも、かぐや姫様でもいいけど」

「じゃあ輝夜で」

「えらくあっさりね。調子が狂うわ」

 人にイニシアチブを取られるのは好きじゃない。俺は相手より先にイニシアチブをとり、翻弄する人間だ。どんな時でも自分のペースを保ち、そこに相手を巻き込む。確実にそれをこなせているわけではないが、それを意識して俺はいつも行動している。
 例外はゼルレッチ爺さんだ。あの爺さん相手だと、どうにも攻め手に回れない。そこに多分、今後はゆかりんも追加されるかもしれない。無論、そのままでいる気は毛頭ないけどな。

「あら、私は敬称つきなのに姫様は呼び捨て?」

「俺が敬称をつけるのは、相手が年上のお姉さんみたいだとかんじた時だけです。それ以外は基本、呼び捨てですよ」

 主に秋子さんとか、佐祐理さんとか。舞は例外である。年上だが、なんとなく妹を見ているというか世話のかかる相手というか。

「なら私も年上じゃない」

「ならババァって呼んでやろうか?」

 なんでよ!? と輝夜からクレームが入る。なんというか、輝夜は年上という気がしないし。

「私がババァなら永琳もでしょ!」

「あらあら……ひどいですねぇ、姫」

 おおう、俺の横でブリザードが。輝夜が怯えたような表情をしたのなんて見てないし、助けを請うような視線をこちらに向けているのなんて知らない。あと、決して永琳さんの方は見ない。見てしまうときっと後悔するから。

「さ、先に言ったのはそいつじゃない!」

「それもそうですね」

「うぇっ。別に永琳さんには言ってませんよ、輝夜だけに言った冗談じゃないですか」

 まぁ、永琳さんの年齢が実際いくつかは知らないけども。輝夜の言葉を聞く限り、少なくとも下ということはあるまい。というか、かぐや姫の伝承って相当昔のことだったよな……確か平安京があった時代だったっけ? 相当年齢くってるな、とすると永琳さんも……いや、これ以上の思考は危険だ。
 下手に女性の年齢をつっつくとデッドエンド一直線なのである。でも、秋子さんが実際いくつなのか気になるところではあるけど。

「失礼ね」

「まぁ、許せ。それと永琳さん、そんな怖い目で見ないでくれませんか」

「別に見てないわよ」

 そうは見えない。まさにこっちみんな状態だ。この人はあまり手を出さないようにしよう。秋子さん的な感じがする。

「師匠、患者さんが」

「今日は病人が出るわねぇ。ちょっと失礼するわ」

「なら俺は帰らせてもらいますよ。このままお邪魔しているのもなんですし」

「あら、帰っちゃうの? もう少し話をしていってもいいんじゃない?」

「別に今日だけって話でもないだろ? しばらくは幻想郷の観光をしてるし、会う機会はあるさ」

 それもそうねと輝夜は納得し、新しくきた患者の下へ行くという永琳さんと鈴仙を見送る。輝夜に案内されながら永遠亭の入り口へ。いざ帰ろうと思うが、ふと帰り道をどうするか考えてなかったことに気付く。ある程度は覚えているが、さすがに全部は無理だった。
 景色自体がほとんど変わらないから、その覚えた道もどこまでだったかすらも分からない始末。空を飛んで上から帰ったほうが早いか。

「よかったら竹林の出口まで送るよ?」

「む、いいのか?」

「これ次第だね」

 そう言って吊り下げた小型賽銭箱を揺らす。こやつめ、先ほどくれてやったというのにまだほしがるか、いやしんぼめ。仕方なしに500円を投入してやる。
 毎度あり、とにこにこ顔。ええい、このこあくま兎め。てゐの案内で竹林の出口までさほど時間をかけずに辿り着くことが出来た。安い買い物だと思えばいいのだが、なんとなく釈然としない。

「しかし、良く覚えられるなこんな道。妹紅もそうだが、記憶力すごすぎだろ」

「んー、まぁ私も道は覚えてるっちゃ覚えてるけど、今回のはちょっと違うかな。私の能力は人間を幸運にする程度の能力って言って、その幸運で竹林の出口に来たのさ」

 幸運にする、ねぇ。幸運なんて個人個人で違うものだからなぁ、基準がよくわからん。

「なんとも微妙な幸運だ。いや、この場合能力か?」

「微妙言うな。里の人間は私を見つけて幸運を授かろうとするぐらいなのに」

「幸運なんて探して見つかるもんでもないだろうに。意識していない時、ふと自分に起こるのが幸運だと俺は思うんだがな」

 四葉のクローバーとか、探すと見つからないのに忘れた頃にふと視線をやれば見つかる、なんてことがあると思う。

「……ふーん、なるほどなるほど、確かにそうかもね。探して見つけるのは幸運じゃないか」

「?」

「なんでもないよ。じゃ、私はここらで失礼しようかな」

 そう言っててゐは去っていく。俺に背中を向けつつ、手を振って。見えていないだろうが俺も手を上げてそれを見送り、まずは一旦人里へ向かうことにする。既に周囲は夕暮れ、さほど時間がかかることなく夜になるだろう。流石にここから紅魔館へと帰る自信はなく、一度人里に戻らないと迷うかもしれない。
 さて、また空を飛んでいこうと体を浮かせた時、俺の耳に微かな歌声が聴こえた。

「?」

 ふと気になり、帰ろうとした気持ちがそちらへと向く。どうしたものか、と考えていた俺の体はふらりとその歌声に誘われるようにして再び竹林へ。帰り道が分からなくなったでは洒落にならないと歩いている道を頭の中に叩き込んでいく。

(しかし、なんだって歌声なんか気にしたんだ。確かにこんな所で歌声なんて変だとは思うが)

 ここは幻想郷、妖怪が普通に存在している世界。そういうこともあるのだろう。だが、何故だろうか……この歌声を聴いてから段々と視界が暗くなっているような気がする。

(いや、気がするじゃない。実際に暗くなってる……!?)

 さっきまではっきり見えていた視界。それが狭くなっている。俺の目はしっかりを開いているというのに、見える範囲が徐々になくなっているのだ。足を止め、瞬きをするも一向に解消されることはない。
 この歌声に近づくにつれ、こうなっていった。なら、この歌声から離れれば自然と回復するかもしれない。それに、先程から嫌な予感と気配がする。

「チッ」

 ざっと地面を蹴り出そうとする俺を、声が引き止める。

「逃がさないよ~、私のご飯」

「なるほど、ご飯ね。悪いけど、俺は食べてもうまくないと思うが」

 何せ腹の中は真っ黒だし。きっと腹を壊す。視界は既に暗く染まり、ほぼ目の前の物しか見えない。声の主の姿さえ、今は捉えることは出来ない。

「食べてみないとわからないわ」

「丁重にお断りする、食べられたら死んじまうし」

「でも駄目。貴方の目はもう見えていない、鳥目になった以上私からも逃れることは出来ない。素直に食べられなさいな、人間」

 声の主の気配が動く。鳥目になったから逃れられない、とは面白いことを言う。視界がほとんど役に立たないというのはかなりのハンデだが、それでも俺の体は動く。動く以上、逃げ切ることは可能だ。
 感じる気配を頼りにし、向かってきたと思われる妖怪(それも少女の声。ここの妖怪は女ばっかか?)を避ける。

「あれ、避けられた。何、貴方もしかして見えてるの?」

「いいや? とりあえず、この場はひとまず逃げさせてもらうぜ。今の状況、圧倒的に不利だからな」

 先程覚えた道は既に役には立たない。目がほとんど機能していない以上、僅かに感じられる草木の気配だけを頼りにしながら障害物を避けて走る。俺を呼び止めながら妖怪が追ってくるが、速度は俺の方が速いのか段々と声は遠ざかっていく。それと共に視界が少しずつだが、戻っていく。

(よしっ、やっぱり離れれば元に戻るみたいだな)

 だが、どうしたものか。がむしゃらに走ったせいで道がまったく分からない。このまま迷い続けて遭難、なんて事態は御免被る。視界がもう少し回復すれば、空を飛んで逃げるという選択が……そう考えていた時、何かが向かってくる気配。

「うぉぁ!?」

 咄嗟に体を投げ出して回避する。見えたのは光の弾のようなもの。ガンドとは違うか、ありゃ呪いの弾丸だし。これはどちらかというと光線というかそんな部類。
 その光の弾が向かってきたのを皮切りに、次々と雨あられと同じものがやってきた。それを必死に回避しつつ、逃げの一手。

(光の弾の弾幕だなこりゃ……)

 思わず某艦長の台詞が思い浮かぶ。

「くそ、まだ追ってくるか。よっぽど腹減ってるみたいだな……っ」

「……祐一?」

 前から声。もんぺ姿に長い髪……妹紅。

「何やってるのよ」

「妖怪に追っかけられてた。目が見えなくなったから、がむしゃらに走って逃げてたんだよ」

「あぁ、ミスティアね。歌声にでも惹かれたの?」

 む、向こうは俺が近づいた理由が分かっている様子。確かに歌声が気になって近づいたが……惹かれたとも言える。あの歌声は人間を誘う為のモノということか。

「う、アンタ……」

「悪いわね、ミスティア。コイツは私の知り合いなの、流石に食べられると後味が悪いわ」

 そう言って妹紅が手のひらに炎を生み出す。

「……むぅ」

 不利を悟ってミスティアと呼ばれた妖怪は竹林の奥へと消えていく。俺の視界が完全に元に戻り、一息。

「悪い、助かった」

 逃げ切れる自信はあったが、無駄に走り回らずに済んだ。しかしこれ以上この竹林をがむしゃらに逃げれば、出られる自信は俺にはなかった。時間をかければ出られるだろうが、どれぐらいかかるか分からない。

「いいよ、別に。私が言ったことに嘘はないし。人里に戻るんでしょ、案内するわ」

「何から何まで助かる。もう道も何も分からなかった」

「ここは道が複雑だからね、仕方ないわ。時間があったら、道ぐらい教えるわ」

 妹紅の後ろをついていく。かなり遅くなってしまった、紅魔館に着く前に完全に夜になっているだろう。飯、どうしようかね。用意してあったら食べるんだが。
 あぁ、そういやルビーはどうしてるか。拗ねてないといいんだけど。




 帰ったとき、ぼろぼろで半泣き状態のルビーがベッドの上で臥せっていた。一体何が……?
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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