2017 / 06
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誰もが忘れていたリリなのクロスモノ。

「……ふん」

 つまらなさそうに、しかしどこか苛立ちをこめて祐一は息を吐く。十二月二十四日、世間ではクリスマスイブで賑やかな日。だが、祐一の目の前ではそんな世間の状況と遠くかけ離れた出来事が起こっている。
 闇の書の主、八神はやてを救わんとする守護騎士達と、守護騎士たちの行動を止めるべく動いていたなのはにフェイト。それが病院の屋上にて対峙していた。

「はやてとかいう子供が闇の書の主だと気付いたのか」

 それにしても、何もこんな日にと呟かざるをえない。人付き合いのない祐一だが、クリスマスの二日間はバイトを休み、どうせ大した進展もないだろうと考えていたのだが、現実は非情である。
 なのは達は八神はやてが闇の書の主だと気付き、守護騎士達と相対している。その様子を祐一は、少し離れたビルの上から眺めていた。

「始まったか……」

 先に仕掛けたのは守護騎士達。戦闘が始まると同時に、祐一はビルを移動する。戦闘をもっと近くで見届けるために。
 空中で放たれる魔法と魔法のぶつかり合い。ビルの屋上では、シグナムとフェイトが互いの武器で近接戦闘。

「あなたは……」

 シグナムの後方に控えていたシャマルが、近づいてくる祐一に気付く。それに答えることなく、ビルのフェンスの上に降り立ち、二つの戦闘を静かに眺める。やはり、魔術師とは遠くかけ離れた戦闘光景だ。どちらかといえば、聖杯戦争におけるサーヴァント同士の戦闘と言った方がしっくりくる。
 知識としてゼルレッチから授けられただけで、実際にその戦闘を見たことはない。教会の代行者と自分達の戦いの延長線上だと思っておけ、ということを聞いたぐらいだ。端から見れば、自分達の戦いもこういう風に見えるのだろう。
 シャマルは何もせず戦闘を眺め続けるだけの祐一を気にしながらも、シグナムとフェイトの戦いを見守る。

「……?」

 戦闘を眺め続ける祐一だが、何か違和感を感じた。空に視線をこらすが、特におかしなところは何もない。相変わらず人払いの結界らしきものが張られており、人の気配がなくなのはとヴィータという少女が戦っているだけ。
 だが、違和感は消えず。祐一の魔術師としての知識が訴える。何かが起こる、と。





「本当の、な、まえ……?」

 高町なのはの放った言葉に、ヴィータは固まる。グラーフアイゼンを握る手は無意識に力み、その言葉がずっしりと重くのしかかる。
 闇の書――それの本当の名前。一体、何を言っているのか。自分達はずっと長い間、闇の書と共に転生を繰り返してきた。だから闇の書が本当の名前のはずだ。

 でも、本当に? なら何故こんなにも心がざわつく? 

「……うっせぇ、それがなんだってんだ。あたしらは、はやてを助けたい。それだけだ!」

 デバイスを振りかぶり、ヴィータはなのはに向かって突撃する。

 その言葉に嘘はない。守護騎士達の目的は、自分達の主である八神はやてを救うこと。そして、ずっと一緒に暮らして幸せになる。
 それを叶える為に、自分達は闇の書の蒐集を開始したのだ。今更、やめられるはずもない。もう、完成は間近なのだ。はやてが真の主になり、そして――

「なんで……えっ!?」

 悲痛な顔で、なのははヴィータを迎え撃つ為にレイジングハートを構えようとした。だが、周囲に突如光の帯が現れ、彼女を拘束する。
 拘束魔法である、バインドだ。

「ば、バインド……また!?」

 展開させていたアクセルシューターも消え、なのははもがく。バインドは魔法である以上、そのプログラムを解除しなければ解くことは出来ない。力技だけで拘束を破ることは出来るかもしれないが、まだ幼い少女であるなのは、それをやれというのは酷だろう。

 いくら地球出身の中で天才的な魔法の使い手とはいえ、彼女はまだ子供なのだ。

「なのは!」

 レヴァンティンとバルディッシュの刃が離れる。シグナムから距離を離し、フォトンランサーを生み出して周囲に視線を凝らす。一部始終を見ていた祐一も、そしてフェイトと戦っていたシグナムも、この場にいる"招かれざる客"を探している。もっとも、祐一も"招かれざる客"なのだが。
 それはともかく、この場にいるのは十中八九あの仮面の男。こちらを排除する意志を見せていたのだ、自分がここにいる以上仕掛けてくるかもしれない。奴にとって祐一は邪魔者以外の何者でもないのだから。

「―――そこ!」

 虚空に向かってフォトンランサーを放つ。本来なら何もない空間に放たれたその攻撃は空の彼方に消えていくはずだが、不自然に掻き消える。そして、その攻撃が消えた場所の空間が僅かにだが歪んでいるのが祐一には見えた。
 すぐさまそこに向けて、呪いの塊であるガンドをマシンガンのように連射する。

「くっ……!?」

 空間が歪み、そこから仮面の男が現れる。やはり隠れて様子を伺っていたらしい。これ以上邪魔になる前に始末すると決断し、地を蹴り空を駆けて仮面の男へと向かう。首の骨程度ならば少し力を入れるだけで簡単に折れる吸血鬼の手が伸びる。
 だが、それを妨害する要素が現れる。突如横からの衝撃を受けて、祐一の体は地上へと落ちてゆく。

 ――蹴られた。地上へと落ちながらそれを知る。どうやら仲間がいたらしい。その可能性に至らなかった自分の不甲斐なさに、祐一は怒りを覚える。

(チ、ぬるま湯に浸かっていたせいか、平和ボケしたか……むっ?)

 空中で体勢を立て直し空を見上げた祐一は目を細める。空中にいる仮面の男"達"。現れた仲間は、仮面の男と瓜二つ……それこそ同一人物と言っても良いほど似ていた。

「あっ……くっ!?」

「何!?」

「み、見境なしかよ……っ」

 フェイト、シグナム、ヴィータ、シャマルと次々にバインドで捕らえられていく。無論、それは祐一も例外ではなく周囲に光の帯が現れ、祐一を捕縛するべく範囲を狭める。

「図に乗るなよ、人間が!」

 そのまま捕らえられるわけもなく、祐一は自身にかけられたバインドに対して力で対抗する。魔法の原理は未だ分からないが、吸血鬼の力をもってすれば破壊できないはずはない。
 吸血鬼もランクは低くとも神秘の塊。神秘はそれを上回る神秘にて対抗できる。祐一にかけられたバインドは、咆哮と共に吸血鬼の力で無理矢理引きちぎられた。

「……化け物め」

 忌々しそうに呟く仮面の男の一人。だが、ダメージがないわけではない。この世界の魔法は魔力に対してダメージを与える。先ほどのバインドを破った時も、魔力が僅かながら削られた。魔法を受け続ければ魔力切れを起こす可能性もある。
 これ以上魔法を使われる前に仕留めると祐一は意識を切り替えた。自分の目的の為にも、あの二人は邪魔だ。
 再び空へと上がり、二人の男の息の根を止める為に爪を伸ばす。

「何故、我らの邪魔をする吸血鬼……っ!」

 繰り出される爪での攻撃を仮面の男達は避け続ける。攻撃を受ければ致命傷は免れない。非殺傷設定での戦闘ではなく、正真正銘命を賭けた殺し合い。

「貴様には、何の関係もないはずだろう……っ?」

「あぁ、そうだな。だが……お前らがいると目障りだ。だから死ね」

 簡潔に述べられた理由。なるほど、確かに分かりやすい。自分達もこの吸血鬼が障害になると判断し、初めは排除しようとした。しかし、その後一向に現れる気配もなくもう構う必要もないと思っていたのだが……やはり、不確定要素は取り除くべきだった。

「我らの目的の邪魔はさせん。大人しくしていてもらおう、吸血鬼!」

 時間をかければ守護騎士達にバインドを外される。その前に多重バインドで動きを取れないように拘束する――仮面の男達はそう結論を出し、一人が祐一をへと向かう。もう一人は後方から魔法による援護。
 攻勢へと出た二人に動揺もせず祐一は接近戦を挑んでくる方を攻撃する。魔法が飛んでくるも、それを避けつつ、時に回避しきれないと悟れば無理矢理無効化。後者に関しては魔力を削られるのでできればやりたくないのだが……直撃よりはマシなのだ。

(クソ、鬱陶しい。こいつら、一体何が目的だ……?)

 ここにいる全員を拘束し、何を為そうというのか。少なくとも真っ当なことではないことは確かだが、所詮自分には関係ない。だが、自分に敵対した以上は倒すだけ。
 倒した後は、勝手に戦闘を再開して勝手に終わればいい。自分の目的は"魔法というものの性質を見極めること"だ。

「いい加減死ね、魔術師共……!」

 苛立ちをこめて呟き、自分への肘打ちを捌き鳩尾に向けて拳を叩き込む。めり込む拳の威力は凄まじく、男の肋骨をいくつか砕いていく。衝撃は止まらず、男は吹き飛ばされた。

「がはっ!」

(なんだ? 妙な手応えがしたが……)

 男に対し違和感を覚える祐一。その一瞬の油断が明暗を分けた。バインドにより再び拘束され、抜け出す暇も与えられず二重、三重、四重とバインドを強固に重ねがけしていく。

「くっ……!?」

 流石にこれだけのバインドを力技で破るのは容易ではなく、抵抗するものの祐一は捕まってしまう。バインドで捕まった面々が仮面の男達によって集められる。

「邪魔は入ったが……ようやく、我らの目的、果たすことが出来る」

 自分達の前で浮かぶ闇の書を手に仮面の男は一言、"蒐集"と口にする。苦痛の声と共に、自身のコアを蒐集されシグナム、シャマルとその姿を消していく。悲痛な声で二人の名を叫ぶヴィータだが、バインドは外れない。

「なんだよ、なんなんだよお前らぁぁぁあああああ!!」

 咆哮するヴィータを、なのはとフェイトは悲しそうに見つめる。祐一は無表情だが、自分を拘束しているバインドを外そうと抵抗中だ。しかし、何重にも重ねられたバインドはそうそうには解けない。一寸の隙間もなく、自分を拘束する。
 苛立ちと怒り。視界が赤く染まる。

(チ、俺にはなんの関係もないんだが。だが、こいつらの行為は気に入らない)

 奥歯をかみ締める音。今また、咆哮とともにやってきた守護騎士達の一人、ザフィーラが捕らえられ闇の書へと吸収されていく。その痛みと無念さの断末魔が、ヴィータの心を傷つける。

「ひどい……ひどいよ。あの人達、一体なんで……っ」

 自分達を閉じ込めている結界の中で、なのはは泣く。状況はさらに進み、ヴィータをバインドで捕らえ仮面の男達はなのはとフェイトの姿をまね、魔法で八神はやてを屋上へ召還する。何をするつもりか知らないが、このまま閉じ込められたままでいる気は祐一にはない。

「ぐっ、ぁあああああああああああああああ!!」

「っ……!?」

 気合の咆哮。千切れ飛ぶ全てのバインド。祐一達を閉じ込めていた結界は、その勢いで振るわれた両手により崩壊。それに気づいた偽なのは達は驚き振り向く。
 だが、その行動が完全に済む前に祐一は仮面の男が扮した偽者のなのはを捕まえる。

「そんなに魔力が欲しいのなら、自分達のを使えばいいだろう?」

「貴様、まさか!?」

 にやりと笑い、祐一は闇の書を偽なのはに近づける。蒐集対象を見つけた闇の書は、偽なのはのリンカーコアから魔力を奪い始めた。
 魔力を吸い取られ姿を維持できなくなり、偽なのはは仮面の男へと戻る……はずだった。

「……なるほどな、あの姿も借り物だったわけか」

 祐一の目の前にいるのは猫の耳に猫の尻尾をつけた女。魔力を吸い取られ、意識は既にない。

「ロッテ!」

「となると、そっちも借り物の姿か。だが生憎と、コイツはもう満腹らしい」

 闇の書が祐一の手から離れ、はやての元へ行く。シグナム、シャマル、そしてザフィーラという最愛の家族を失い、今まさにヴィータさえも失いかけたはやての目は虚ろ。
 その頬を、涙が一筋伝う。座り込むはやてを中心とし、屋上に魔法陣が描かれる。

「はやてちゃん!」

「はやてぇ!」

 なのはとヴィータの叫びは届くことなく、はやての姿が光の中に消える。闇の書――かつては夜天の魔導書と呼ばれたロストロギア。それが今魔力を得て、再びここに完成する。

「――――主の望みのままに」

 現れる闇の書の管制人格。銀の長髪を風に揺らし、管制人格は涙を流す。祐一は捕まえたままであったリーゼロッテを偽フェイト……変身をといたリーゼアリアへと投げる。

「完成すると同時に宿主を乗っ取る、か。まともな代物じゃないのは確かだな……っ」

 自分へと放たれる魔法を回避する。闇の書の管制人格は、涙を流したまま祐一へと手を向けていた。

「……」

「俺も敵、か。まぁいい、それが望みなら相手になってやる。宿主ごと死んでも文句は言うなよ?」

 敵対するものには容赦はしない。それが例え、女であろうと子供であろうと。

 聖夜の夜、吸血鬼と悲しき魔導書の戦いがはじまろうとしていた。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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