2017 / 03
≪ 2005 / 07   - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 -  2005 / 08 ≫
*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


二話 魔性の者が棲む館・紅魔館

 レミリアの提案は、俺にとっては嬉しいものだ。人里に行っても、もしかすると住める場所がない可能性もある。無論、ある可能性も高いだろうがない可能性は0じゃない。それが今、頷けば宿が手に入る。
 しかし、そうそう頷けはしない。

「で、条件は?」

「あら、なんでそう思うのかしら」

「タダより怖いもんはないからな。ましてや、レミリアは吸血鬼だろ? 見返りを要求されない方がおかしい。魔術師の基本は、等価交換。俺もそれに則ってるだけさ」

 相手が何かを提案する以上、交換条件があると考えるのが当然。何の見返りも要求されなければ、逆に怪しく思う。士郎ほどのお人よしなら特に思わないが。
 レミリアは笑う。従者の咲夜は、レミリアの提案には賛同しかねるみたいで少し眉を顰めていた。無理もないと思う。

「ふふ、そうね。貴方の血がほしい、と言ったら?」

「んー、それぐらいなら別に構わないが」

「って、即答? もう少し悩むとかしないの貴方。自分の血を要求されてるのよ?」

 呆れた表情のレミリアに、霊夢や魔理沙、咲夜も表情は違うが多分レミリアと同じことを思っていると思う。というか、吸血と言われても正直身近なことだから特に危機感を覚えない。そりゃ、死ぬまでとか、吸血鬼化させられるとかになると話は別になるが。

「ようは献血だろ? 死ぬまでとか、吸血鬼化させる、とかにならない限りはいいぞ」

「……貴方、変わってるわねぇ。怖くないのかしら吸血鬼が」

「生憎と、吸血鬼に対する幻想はとっくに破壊されてるんで。何せ友人に吸血鬼いるし、うち一人はただのあーぱーだしな」

 半笑いで言い切る。そのあーぱーが、アルクェイドのことなのは言うまでもないだろう。いや、普段はあーぱーだが戦闘になるとまず勝ち目はないけど。今は志貴に夢中だし。危険度で言えば琥珀さんの方が高い。

「で、どうするんだ? 俺はいいんだが、咲夜つったっけ。彼女はあまりいい顔をしてないし」

「お嬢様がそう決めたのなら、私はそれに従うだけよ」

 そうは言いつつも、表情には不満も見える。ま、自分で言うのもなんだが不審者だしな俺。俺みたいなのは、外来人というらしい。外からの来訪者、という意味だろう。

「そうか。なら、世話になろうかね。よろしく、レミリア」

「えぇ。ふふ、いい暇つぶしになりそうね」

 日傘をくるくると回し、レミリアは微笑む。暇つぶしの相手になれるかどうかは分からんが、とりあえず当面の宿は確保できたのでよしとしよう。
 無論、気を抜くつもりはないが。霊夢と魔理沙にまた来ると別れを告げ、レミリア達と共に彼女達の住む紅魔館とやらに行くことに。彼女ら以外にも数人(?)住んでおり、さらに妖精のメイドも大勢いるとか。
 ファンタジー全開もここまでくるといっそ清々しい。流石に妖精なんて俺は見たことがない。死者に吸血鬼、英霊ぐらいだろう。俺も十分ファンタジーな世界に生きてるとは思うけど、ファンタジーというよりバイオレンスの方が正しい気がする。

「そういや、えっと……咲夜、でよかったか? 馴れ馴れしいなら、苗字で呼ぶけど」

 初対面の相手はたいてい、苗字で呼ぶ。心の中でだけは下の名前だけど。男の場合、一部を除いては苗字だ。北川を潤、なんて呼ぶのは何故か抵抗があるし。久瀬も同じ。

「別に構わないわ。苗字で呼ばれるなんて、慣れてないもの」

「そうか。さっきはレミリアに殺気を向けたりして悪かったな、わざとじゃないから許してくれ」

「私は気にしてないわよ。咲夜、もう許してあげなさい?」

「お嬢様がそういうのでしたら」

 ぎくしゃくしたまま、というのは非常に居心地が悪い。そんな調子で一つ屋根の下、なんてことになったら胃に穴が開く。医者を呼べ医者。祐一さんの胃は繊細なんだから、常に最新の検査をすることを求めますよ。
 医者なんてほとんどお世話になったことはないけども。

「祐一、貴方空を飛ぶことは出来る?」

「いきなり何無茶なことを要求しとるんだこの幼女」

「よっ……!?」

 人間には飛ぶ機能なんてついてない。永続的に空を飛ぶ、なんてことは出来ないに決まってる。俺の場合、空を蹴って一時的に滞空することが出来るだけだ。というか、空を飛ぶなんて芸当が出来る奴が知り合いにいない。
 ライダーは宝具を使えば飛べるが、あれとはまた別物だろ。

「い、いい度胸してるじゃない。私に面と向かって幼女だなんて……」

 ふふふ、と怒りに満ちた笑い。背に生えた翼はばさばさと怒りを表すようにはためき、口元はぴくぴく。大層ご立腹の様子。背筋にぞくりと寒気が走るが、これはまぁ秋葉ちゃんをからかった時と似た感覚である。
 それよりも、気になるのはレミリアの後ろにいる咲夜。なんでもない様子だが、微かに口元が緩んでいるのを見逃す祐一さんではない。

「咲夜、別に我慢せず笑えばどうだ?」

「咲夜っ!?」

 まさかの従者の裏切りを知り、レミリアが絶望したような顔で振り向く。

「い、いえ、彼の目の錯覚でしょう。私が主を馬鹿にされて笑うとお思いで?」

 きりっと何事もなかったようにレミリアに応える様子には、確かに何もおかしいところはない。だが、少しだけ笑っていたのは事実。それだけは譲れないのである。ま、今はどうでもいい。

「つか、人間は空を飛べないんだが」

「あら、霊夢や咲夜は飛ぶわよ?」

「あぁ、そういや霊夢の能力がそんなのだって聞いたな……」

 顔を顰めるのも無理はないと思いたい。霊夢はまだしも、そこの咲夜までも飛べるとか。一体この世界はどうなっているのか。あれか、俺も飛べるのか。頑張れば快適な空の旅をエンジョイできたりするのか。非常に魅力的だぞ。

「あのスキマから何も聞いてないの?」

「スキマ? あぁ、ゆかりんのことか」

「ゆ、ゆかりん?」

 何かとんでもないことを聞いた、とでも言いたそうな顔だ。後ろにいる咲夜も、何言ってるんだコイツといった表情。まぁ、少々ファンシーすぎる名前ではあると思う。爺さんも歳を考えろ、と突っ込んでいた理由もわかるが、なんとなく似合ってる気がする。
 それに、今更他の名前で呼ぶのもねぇ。基本はゆかりんで定着だ。

「ゆかりんがそう呼べって言ってたしな」

「そ、そう。で、アイツから何も聞いてないのね? 弾幕ごっこに関しても」

「何やら不穏な響きの単語が出てきましたよ奥さん」

「誰が奥さんよ」

 つれない言葉を咲夜からもらい、レミリアから弾幕ごっこについて軽い説明を受ける。簡単に要約すると、殺し合いではなく霊力や魔力といった力で作り上げた弾を放ち、戦うスポーツのようなものだとか。相手を倒すことも重要だが、さらには弾幕の華麗さも大事だという。そして、自分の得意とする大技を放つ際には、その技の名前が書かれたカード――スペルカードというらしい――を掲げ、それを宣言してから技を行うのが絶対のルール。
 あれか、これから大技を使うから覚悟しろよのこの○○野郎、って感じだろうか。

「ま、簡単にまとめればそんな所よ」

「弾幕ねぇ。出せないにしても、せめて空を飛ぶくらいは出来たら楽しそうだな」

「練習すればなんとかなるんじゃない?」

 そんなもんなのか。咲夜曰く、空を飛ぶくらいは出来ないと幻想郷の移動は不便だという。そんな事言われても、飛ぶっていう概念が良く分からないからなんとも言えんのだが。誰かに教えてもらえるのなら、教えてもらおう。飛べると楽しそうだし?
 そのまま歩き、やけに広い湖がある場所に出る。何せ向こう岸が見えないくらいだ。

「この先が紅魔館よ」

「……船が見当たらないんだが」

 まさか、泳げと。水着なんて持ってきてないぞ。着の身着のままでゆかりんに放り出されたというのに。せめて荷物ぐらい、後で取りに帰らせてもらないだろうか。この幻想郷に暫く滞在する、という意思は変わらないし。

「咲夜」

「はい」

「お? なんで俺の体に手を回す?」

 後ろから俺の脇に手を通し、持ち上げるようにする。一体何を、と思う間もなく足で感じていた地面の感触が無くなった。そして感じる浮遊感。これはランサーの召還したスレイプニルに乗ったときにも感じたもの。

「お、おぉぉぉぉぉ」

 不思議な気分だ。人間が単体で飛び、さらに俺を抱えているというのは。地面から少しずつ離れ、ある程度の高度まで達すると今度は前へと進みだす。そうすると下にあるのは地面ではなく、水面。落とされたら水浸しは必須だ。

「流石に、重いわ」

「まぁ、男だしなぁ。女の腕力じゃきついと思う。悪いな、迷惑かけて」

「意外と殊勝なのね」

「これぐらいはな」

 いやまぁ、足に気を集中させれば水の上ぐらい走れそうな気もするんだが。それを言うと問答無用で落とされそうなので、あえて黙っておく。こういう体験なんて、滅多に出来るもんでもないし。ちょっと脇の辺りが痛くなるが、我慢。
 ふよふよと遅くはないが、速くもない速度で湖を進み続ける。

「空を飛べる、って便利だな。スピードも出せるのなら移動時間も短縮できるし」

「今は速さも抑えてるわ。魔理沙だったら問答無用で最速でしょうね」

 それを聞くと乗りたくないな。流石に体に急激な重力がかかるのは勘弁願う。でも、何故か分からんが将来的に乗る羽目になる気がするのはどうしてだろうか。あれか、俺の第六感が何かを感じ取っているというのか!

「そろそろね」

「美鈴、また昼寝してるんじゃないでしょうね。もしそうならお仕置きしなきゃ」

「美鈴?」

「うちの門番よ。たまに昼寝してるけど」

 それは門番として問題だと思う。でも、確かに門番って敵の襲来がなければ暇な職業だし、仕方ないのかもしれない。話し相手がいるのなら別だろうけど。湖ばかりだった景色が変わり、俺の目先には紅い色の館が現れる。あれが紅魔館か。
 地面がある所まできて、咲夜は俺を降ろす。一言礼を言い、紅魔館目指して歩き出す。と言っても、ほとんど目と鼻の先にあったわけですぐについた。

「……あ、お帰りなさいませお嬢様。咲夜さん」

 門前のところで、子供らしき影三人と話していた女がレミリアと咲夜を見て、そう言う。門の前にいてレミリアをお嬢様、と呼ぶことは彼女が美鈴か。レミリアと同様、四人に対して退魔衝動が疼くが漏れる殺気を抑え込む。心臓に悪いな、本当にこの衝動は。

「えぇ、ただいま。ルーミア、チルノ、大妖精。何やってるのよ」

「中国と遊んでただけよ」

「だから中国じゃないって……」

 青髪で背中に透明な羽を生やした子に中国呼ばわりされた美鈴が肩を落とす。あだ名みたいなものだろうか。確かに、チャイナ服を着てるから中国っぽいが。

「知らない人間がいる。ねー、それ食べてもいい人類?」

 いきなり恐ろしいことを言われた気がする。まぁ、この子も妖怪っぽいから当たり前のことなのだろうけど、言われた方としてはたまったものじゃない。カニバリズムもほどほどにしてほしい。

「言っておくが俺は食べても不味い人類だ、何せ腹の内が黒いからな。まず腹を壊すぞ」

「でも食べてみないと分からないよ」

「今度何か食わしてやるから、それで勘弁してくれ」

 不満そうだったが、渋々引き下がった。末恐ろしい子供である。いや、外見が子供なだけで俺より年上な可能性も否定できんが……いや待て。てことは何か、ここはあゆの巣窟なのか!?

「な、なんてことだ……外見は小さいのに、俺と同い年か年上だと……!?」

 まさか、これが巷で噂の合法ロリという奴か! あゆや栞もそこそこちっこいが、それ以上の存在がここにはうようよしている。そしてその誰もが、俺より年上かもしれないのだ。
 恐ろしい……幻想郷は本当に恐ろしい場所だ。今俺は、未だかつて感じたことのない焦りと恐怖を抱いている。

「あの、大丈夫ですか?」

 緑髪の背中に羽を生やした子が心配そうに声をかけてくる。こういう子が、妖精なんだろうか。

「あ、あぁ。少し恐ろしい事実に気付いて愕然としただけだ、大丈夫」

「はぁ……」

 良く分からない、といった表情。この事実は俺の心の中だけにとどめておきたいから、気付いてくれなくて結構。それに、冷静に考えると馬鹿馬鹿しいにも程があるので闇に葬りたい。

「あの、咲夜さん。その人は?」

「暫く紅魔館に滞在することになった外来人よ。客人だから粗相のないようにね」

「分かりました。初めまして、紅魔館の門番をしております紅美鈴です。気軽に美鈴と呼んでください。中国じゃないですからね?」

 そんな念を押さんでも。いやまぁ、たまには呼ぶけど。

「あぁ、よろしく美鈴。で、そっちの三……人? 体? 匹?」

 妖精はどう数えたらいいものか。妖怪なら体でもいいかもしれんが、見た目的にはほとんど人間と変わらない。羽がなければ人間そのものだし、黒い金髪の子に関しては退魔衝動が反応しなければ人間にしか見えない。

「ルーミアー」

「私には名前がないので、大妖精と呼んでもらえれば」

「あたいは氷の妖精、チルノよ」

 ルーミア、大妖精、チルノね。忘れないように覚えておこう。

「美鈴、私達は祐一を連れて行くわ。門番、さぼらないようにね」

「はい。ほらほら三人とも、そろそろ行きなさいな」

 それに渋るのはチルノだけで、他二人はそんなチルノを引っ張って飛んで行く。やっぱり便利そうだよなぁ、飛ぶのって。弾幕とかはいいが、せめて飛行だけは身につけたい。
 レミリアと咲夜を追い、紅魔館の中に入った俺を出迎えたのは鮮血が散ったかのような真っ赤な内装。なるほど、紅魔館とは言いえて妙だな。

「さて、ようこそ祐一、紅魔館へ。歓迎するわ」

 エントランスに入り、レミリアは振り返って俺を迎え入れる。それに礼を言い、改めて紅魔館の内装をぐるりと見回す。中世の古城を思わせるような趣に、窓の少なさ。吸血鬼の館だからだろう、日の光が入りにくいようにされているらしい。
 しかし何よりも気になるのは、外から見た広さと内部の広さが明らかに違うこと。

「咲夜、私は祐一をパチェに会わせてくるわ。祐一の宿泊する部屋の用意をお願い」

「かしこまりました、お嬢様」

 一礼し、瞬きした次の瞬間には既に咲夜の姿はなく。時間を操ってまたいなくなったのかと悟り、能力をフル活用してるなぁと感心半分呆れ半分。人間の身で時間を操るなんて過ぎた芸当、目にしているだけでも異常だ。爺さんもきっと……いや、あの人のことだ、呆れながらも豪快に笑うかもしれん。
 つくづく幻想郷とは俺の常識の範囲外の世界だと思わせられる。

「ところで、そのパチェって誰だ? レミリアの姉妹とかだったり?」

「ふふ、パチェは私の友人で紅魔館の客人よ。それに、妹なら別にいるわ」

 パチェ――パチュリー・ノーレッジは普段はずっと紅魔館にある大図書館にいるという。寧ろその図書館から出てくること自体が稀であり、幻想郷縁起とかいう代物に動かない大図書館という異名をつけられているとか。図書館の主みたいだな。
 レミリアの後をついていくこと、大体数分ぐらいだっただろうか。少し大きな扉の前につき、レミリアがゆっくりとその扉を開く。中に入れば俺の身長の倍以上はあるだろう、巨大な本棚が所狭しと立ち並び、それが奥が見えないほどの列を作っている。
 その巨大さにも驚くが、やはり思うのは明らかに紅魔館内部の広さとこの大図書館の広さが合わないこと。

「レミリア、なんかこの館変じゃないか? 明らかに外見と中身の広さが一致しないんだが」

「咲夜が空間を広げてるのよ。紅魔館の外見と中の広さは全然違うわ」

 時間を操る者は、空間すらも操る。咲夜の能力で空間を広げているおかげで、紅魔館の中は見た目以上に広大になっているという。そろそろ俺の処理能力にも限度があるんだが……とりあえずなんでもあり、ってことで置いておこう。気にしすぎると禿げる。

「パチェー?」

「……お嬢様、何か用?」

 端に本棚の合間にある小さな机。そこに座るのは、寝巻きかと思うような服とナイトキャップのような帽子、そこに月型のアクセサリをつけた一人の女性。どうやら彼女がパチュリーらしい。そして、やはり反応する衝動。

「別に普段どおりで呼んでくれていいわよ」

「そう。で、何の用かしらレミィ。見慣れない男がいるけど」

 視線を落としていた本から顔を上げ、パチュリーの視線が俺を射抜く。しかし、実際には今にも眠りそうな半目なのでどうにも笑いを誘う。

「暫く紅魔館に滞在することになった相沢祐一だ。よろしく」

「そう、私はパチュリー・ノーレッジ。好きに呼んでいいわ」

 それっきり、興味を失ったように手元の本に視線を落とす。無愛想だと思うが、元々そういう性格なんだろう。舞に似たような感じを受けるが、あっちは感情の現し方が下手なだけで実際は感情豊かだ。もしかすると、こっちもそうかもしれない。

「何読んでるんだ?」

「……これよ」

 近づいてきた俺に迷惑そうに目を向けるが、すぐに見ていた本の表紙を見せてくれる。そこに書かれているのは「ロケットの作り方~実践編」という題。胡散臭さ抜群ではあるが、その著者の名に少々心当たりがあった。

「これ、もしかして外の本か? 著者の名前になんとなく見覚えがあるんだが」

「もしかして貴方、外来人なの?」

「そうよ。服装から分からなかったの、パチェ?」

 良く見てなかったわ、と微妙に失礼な言葉を頂く。ちょっとむかついたので軽くでこぴんを放つ。むきゅっと妙に可愛らしい悲鳴を上げて、顔を若干仰け反らせるパチュリー。額を手で押さえながら俺を睨んでくる。

「何するのよ……っ」

「いや、対応に少し文句があってな。でこぴんさせてもらった」

 非難の視線を向けてくるパチュリーだが、俺は悪くない。くすくすとレミリアの笑いが図書館に響く。

「パチュリー様ぁ」

「あら、小悪魔。頼んだ本は持ってきてくれた?」

「は、はいぃ」

 へろへろになりながら、レミリアと同じような羽を生やした子が本を抱えて飛んでくる。衝動が反応する以上、彼女も人間ではない。多分、使い魔的な何か。
 それにしても、やけに疲れてるな。

「大丈夫か?」

「あ、はい……パチュリー様、レミリア様、この人は?」

「私の客よ。暫くここに滞在するから」

「そうですか、分かりました。パチュリー様の従者をしています、小悪魔と申します。以後お見知りおきを」

 ぺこりと悪魔らしくない礼儀正しさで挨拶をする小悪魔に少し癒される俺がいた。何をもって悪魔らしいと判断するのかは謎だが。こっちも挨拶をかわし、名を伝える。パチュリーに頼み、少しだけ図書館を見回らせてもらうことにした。
 広いので小悪魔に案内を頼む。特に読みたい本があるわけでもなく、ただ単にどういう系統の本があるのか見てみたかっただけだ。パチュリーは魔法使いという種族(人間とは違う)らしく、図書館の本も魔術書が多い。興味がないわけではないが読んだところで理解できるか分からない。
 まぁ、いつか読ませてもらおう。もしかしたら何か役に立つ知識が手に入るかもしれないし。

「祐一様は外の方だとお聞きしましたが」

「あぁ、厳密に言えばちょっと違うかもしれないけど、大体あってる。それと、様付けじゃなくてもいいぞ。話し方ももう少しフランクで」

「ではお言葉に甘えまして、祐一さんと」

 外の方、と言われるとやはり違和感を覚える。外来人は珍しいらしく、人里でも注目を浴びるという。ちなみに、その頭には"生きている"という単語がつくらしいが。妖怪の餌になる外来人は多く、生き延びた外来人は霊夢によって外に帰されるらしい。
 なるほどね、珍しがられるのも無理はないか。

「祐一」

「ん?」

 俺についてきていたレミリアへと振り返る。そこには咲夜の姿も。

「部屋の用意が出来たわ。いらっしゃい」

「了解。それじゃ、小悪魔。また」

「えぇ、また」

 図書館に残るレミリアを残し、咲夜へとついていく。話題もないので互いに無言のまま紅魔館を歩く。

「ここよ」

 案内された部屋は水瀬家での俺の部屋より広い。ゆったり出来そうで非常によろしい。

「ありがとう、咲夜。助かる」

「別に構わないわよ。着替えとかは持ってないわよね」

「あぁ。それぐらいはゆかりんに頼んで一旦帰らせてもらいたい所なんだが」

 一体どこに行けば会えるのやら。その後も、咲夜に風呂やトイレの場所、食事の時間などの注意を受ける。そして、一番念を押されたのが地下には決して行かないこと。そこにはレミリアの妹がおり、下手をすると殺される危険があるからだ、ということらしい。
 まぁ、好き好んでそんな目に遭おうとは思わないが……一応気をつけよう。

「まぁ、最近は妹様も精神的に落ち着いてきてるのだけどね」

「ふーん」

 食事の時間に呼びに来ると言い残し、咲夜が去る。それまでどうするかと迷うが、少し疲れているので寝ることにする。ふかふかのベッドに体を横たえると、自然と眠気が襲ってきた。
 慣れない環境だ、自覚のない疲れがあったんだろう。そのまま意識を暗闇に委ねていく。



 次に目を覚ました時、俺を見下ろす見知らぬ女の子がいた。


スポンサーサイト


この記事へのコメント

この記事へコメントする















神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。