2017 / 02
≪ 2017 / 01   - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 - - - -  2017 / 03 ≫
*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


後日談その1

 セイバーやアサシン達と駆け抜けた聖杯戦争から数ヶ月。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは衛宮士郎の姉代わりである藤村大河の家に居候という形で未だ冬木の土地にいた。
 イリヤの代わりに聖杯として祭られていた間桐桜は、後遺症に悩まされながらも精一杯生きている。唯一変わったことと言えば、衛宮士郎と恋仲になったということか。これには大河は無論のこと、桜の姉である遠坂凛、そしてイリヤも祝福した。きっと士郎の養父である切嗣も喜んでいることだろう。


「シロウ、おっはよー」


「ぐふぅっ!?」


 日曜日の早朝。イリヤはいつものように衛宮邸へと赴き、フライングボディープレスをかまして士郎をたたき起こす。既に日常の光景だ。
 毎度毎度このような起こし方をされる方はたまったものではない。が、士郎がいくら言ってもイリヤはやめることをしないので半ば諦めているのも事実。それでも、この寝起きの一撃は相当クる。


「お、おはよう……イリヤ」


「ほら、早く起きなさい。サクラはもう朝食の準備を始めてるわよ?」


「む、じゃあ起きないと。よっと」


 勢いをつけて士郎は起き上がり、一瞬で布団を畳む。そこになんのタイムラグもない。長年してきた行動ゆえ、頭より先に体が動く。イリヤを部屋の外へと追い出し、いつもの服に着替えた士郎は桜の待つ台所へ。
 挨拶を交わすのもほどほどに、二人で朝食の準備。イリヤは居間のこたつに入り、ゆったりと食事が出来るのを待つ。といっても、既に春でありこたつの電源は入っていない。衛宮家のこたつは年中無休で居間に降臨しているのである。
 朝食が出来る少し前に、凛と大河、そしてイリヤ付きのメイドであるセラとリーゼリットが姿を現す。計七人、衛宮家のメンバーが揃ったことになる。


『いただきます』


 合掌し食事を始める。これも既に日常の光景。だが、数ヶ月前まではイリヤ達の姿はここにはなく、金髪の少女の姿があった。人一倍食事を楽しみ、士郎の作るご飯を美味しそうに食べていた少女はもういない。聖杯を破壊したことにより、彼女は元のあるべき時代へと帰ったのだ。
 そして、それと同時にイリヤにとってかけがえのない存在であったアサシンもまた、現世から姿を消した。今も彼は、英霊の座で世界の抑止力として動いているのだろうか。


「……」


 思い出の中のアサシンの姿。その面影は、やはり月日を重ねるごとに薄らとぼやけていく。最後の時、アサシンに抱きしめられたあの温もりはもう思い出せない。仕方ないこととはいえ、悲しみが浮かぶのは仕方ないことだろう。
 食事が終わり、休日を楽しむ為に各々は好きなことをする。大河は家へと戻り、凛は魔術の研究に余念がなく、士郎は投影の訓練、桜も凛に付き添って魔術の研究。セラとリズも藤村家へと戻り、イリヤも自分の知識が役立つのならと凛の研究に力を貸す。彼女が追い求めるのは、第二魔法の体現者であるゼルレッチ。その足がかりとして、平行世界への扉を開くことの出来る宝石剣の作成だ。士郎の投影により、宝石剣の贋作は出来たもののそれは既にない。
 もう一度投影すれば、とは思うがあれ一つ投影するのに士郎の脳神経が焼き切れてしまう恐れがある。それは凛も良しとしない。ゆえに、彼女に出来るのは宝石剣の再現。その為には、桜やイリヤの力を借りる必要があるのだ。自分ひとりでは無理でも、優秀な魔術師二人がいれば可能性は開ける。


「あ……」


 唐突に声を上げる桜。尋ねると今日のお昼ご飯の材料がないことを思い出したのだと言う。凛のかけていた眼鏡がずれ落ちる。魔術師がお昼ご飯の心配をする、というのも変な話だ。いや、確かに大事なことではあるのだが。買出しに行ってきます、と桜は慌しく出て行く。一人でも大丈夫だろうと、凛は再びイリヤとの会話へと戻る。
 一人お昼ごはんの材料の買出しへと出た桜、深山商店街でいつものように買出しをすませて女性が持つには少し多いかもしれない量の荷物を抱える。しかし、やはり重い。


「先輩にもついてきてもらった方が良かったかも」


「あの、すいません」


「はい?」


 声をかけられ振り向く。まず思ったのは、旅行者なのかなということ。手に持った地図と肩に下げている大きな鞄。少なくとも、少し出かけるだけでは持たないものだ。そして、多分年のころは桜と同じくらいか、少し下か。


「なんでしょうか?」


「少々お尋ねしたいんですが、ここへ行くにはどう行けば……」


 申し訳なさそうに差し出される地図。荷物を持ったままでは少々辛いので、道端に荷物を置いて地図を受け取る。見れば、どうやら彼が行きたいのはこの近くらしい。深山商店街付近や、新都の地理ならほとんど覚えているので、大丈夫だろうと桜は思っていた。
 しかし、地図にマークされている場所とそこに書かれている文字を見て、眉を潜めた。


「えっと、衛宮……?」


「はい、衛宮さんのお宅に用事がありまして。大きい十字路の交差点が目印だ、とは言われたんですけどそこにも行けなくて」


 恥ずかしながら、筋金入りの方向音痴なのでと情けなさそうに吐露する。渡された地図はかなり詳細に書かれており、普通の人間ならあまり迷うことはなさそうな代物。これでも尚、分からないというのならなるほど、筋金入りならば仕方ない。
 しかし、衛宮家に遠方から客とはありえるのだろうか。士郎はそもそも養子であり、その養父であり衛宮切嗣にいたっては魔術師だ。一般の交友関係がない、とは言い切れないが可能性は低いだろう。でも、桜が見たところ彼には魔力をほとんど感じない。隠しているだけとも思えるが、なんとなくそれは違うような気がした。


「えと、実は私衛宮の家に間借りさせてもらっている者なので、今から帰る所ですからご案内しますよ」


「そうなんですか? 助かったぁ……運がいいというか、ラッキーだな俺」


 心底安心したように笑う青年に、桜はくすりと笑う。大げさにも思える仕草だが、嘘っぽくは思えない。荷物を持ち直し、ついてくるように指示をして歩き出す。


「あの、荷物重そうですけど一つ持ちましょうか?」


「でも、お客様にそんな事させるのは」


「いいんですって。それぐらいなら」


 逡巡するが、それに甘えて桜は荷物を渡す。左肩に荷物を背負いなおし、青年は受け取った荷物を右手で危なげなしに持つ。それを見て桜は、やっぱり男手があると楽になるなぁと心の中で呟く。


「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私、間桐桜といいます」


 名前も聞かずに話をするのも失礼だろうと、桜は名乗る。そして相手も自分の名前を名乗った。

「桜さんですか。俺の名前は相沢祐一です。以後お見知りおきを」
スポンサーサイト


この記事へのコメント

この記事へコメントする















神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。