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二十四話

「サクラは聖杯の欠片をその身に埋め込まれて、擬似聖杯として機能している。残っているサーヴァントは三騎。バーサーカーとアーチャーは私が取り込んでいるけど、それ以外のサーヴァントは全部サクラに取り込まれたわ」


 淡々とイリヤスフィールは語る。


「もう、人としての意識を保っていることすら厳しいはずよ。聖杯として完全になってしまえば、彼女は死ぬわ」


「そんな……っ」


 士郎の愕然とした声が居間に響く。しかし、士郎だけでなく凛もまたその言葉に、愕然としさせられていた。


(桜が……死ぬ?)


 そう考えて、凛の背筋に悪寒が走る。いつも無表情であったあの子が、笑ってくれていた。例えそれが限られた時間、限られた場所であっても良かった。桜が、自分の妹が笑っていてくれているのなら。
 だが、死んでしまえばその笑顔を見ることが出来なくなる。話すことも出来なくなる。

 ――馬鹿な姉でごめんなさいと、謝る事も出来なくなってしまう。


(いや……そんなの……!)


 握り締めた手から、血が溢れる。今、凛の中にあるのは壮絶なまでの怒りの念。間桐臓硯に対する殺意。
 自身の感情を抑えられていない今の自分は、魔術師としては二流以下なのだろう。しかし、今の凛は魔術師ではなく一人の姉として怒りを覚えている。その思いに、間違いなどない。


「イリヤ、桜を救うことは出来ないの?」


「――助けること自体は簡単じゃないかしら。でも、その後が一番大変なの。聖杯として完成されつつある今の桜は、言ってみれば魔力の貯水タンク。自分の中にある魔力を持て余している状態なの。仮に救えたとしても、その魔力を処理しない限り命の危険は常につきまとう」


 空気を入れすぎた風船は、内側から外殻を圧迫され爆発する。桜の状態はまさにそれだろう。例え聖杯の呪縛から開放されようとも、蓄積した魔力は消えることはない。
 強すぎる魔力は身を滅ぼす。間桐桜という少女の肉体の中には、その肉体が許容できる以上の魔力が渦巻いているのだ。


「聖杯として作られている私も、例外じゃないけどね」


「本当ならイリヤがそうなっていた筈なのか……?」


 聖杯とは名ばかり、人としての存在を喰らいサーヴァントの魂を喰らい機能する血塗れの万能機。それはもはや、聖杯とは言える代物ではない。


「アサシン、貴方はそれを知っていたのですか?」


「そりゃ、な。召還されてすぐに本人から聞いたさ」


 その時点で、既に自身の願いを叶えることについては諦めている。そう付け足すアサシンの言葉を、セイバーは静かに聴いていた。


「ともかく、桜を助けるにはあのアーチャーを倒すしかないんだな?」


「そうね。あれを倒して、聖杯への接続を断てば一先ずは終わり。その後は、サクラの生命力と魔力の処理方法を考えるだけよ」


 最後に関しては、ここで出せる結論ではない。士郎達はのんびりする暇も惜しいとばかりに、すぐに準備を始めだす。
 ショックから未だ立ち直れていない凛だが、刻一刻と桜の命が蝕まれていくのを見過ごしているわけにはいかない。宛がわれている部屋へと戻り、自身の持つ全ての宝石を身につける。
 机の上に視線をやれば、士郎の命を救った宝石のペンダント。学校に忘れた筈の物を、わざわざアーチャーが持ってきてくれたことを思い出す。


(ほんと、気障な奴だったな……)


 アーチャーの言動と行動を思い出し、苦笑いが浮かぶ。思わず赤面するようなことを言ったかと思えば、ちょっとしたことですぐ拗ねてみせたりする、変なサーヴァント。そして何故か士郎のことを目の敵にしていた。
 そのことで何度か口論になったこともあったが、信頼できた……背中を預けられたサーヴァントだった。

 しかし、そのサーヴァントはもういない。


(馬鹿アーチャー……相打ちなんかになっちゃって)


 バーサーカーと刺し違えて消えていったアーチャー。最後まで彼の真名を知るには至らなかった。だが、今ならわかる。あのサーヴァントは、自分にとって最高のパートナーであったのだと。
 凛の手には、今はセイバーの令呪がある。


(見てなさいアーチャー、私たちは必ず勝つわ。そして……必ず桜を助ける)


 目に浮かんだ涙を拭い、凛は部屋を後にする。迷いはもうない。今自分がすることは新たなパートナー、仲間と共に桜を助けること。
 机の上に置かれた赤いペンダントは、そんな凛の決意を祝福するかのように赤く輝く。


 ――行って来い、凛。君なら勝てるさ。それと……“私”をよろしくな。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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