2017 / 08
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二十三話

 衛宮家の居間に揃った生き残りしマスター達。傷つきながらも生還し霊体化して傷を癒すアサシンを交え、彼らは戦いの戦略を立てる。


「あいつの宝具は異常だ。今のセイバーの力じゃ、どうやっても勝てない」


「……悔しいですが、事実です。前回切嗣に召還され万全の状態でも勝つことが出来なかった相手
だ。魔力供給のままならない今の状態では勝てる見込みはない」


 下唇をかみ締めながら、セイバーは喋る。士郎からの魔力供給がなされていない今のセイバーでは、どう足掻こうとアーチャーには勝てない。宝具の打ち合いでも競り負けうえに、今のセイバーでは宝具を一度しか放てない。二度放つ為には自身の存在を消す覚悟がいる。


「魔力供給か……仮に、士郎の魔力が供給されたとしてもセイバーの能力の低さはネックよ。能力値がせめて平均Aぐらいは欲しい所だわ」


「それなら、士郎とセイバーが契約を切ってリンと再契約すれば解決するんじゃないかしら? 魔術師としての能力はリンが優れているんだし」


 イリヤの提案は、確かにセイバーの能力の低さを解決する最高の手であった。尤も、宝具の使用に関しての制限は変わらないのだが。
 最終的にはその提案が呑まれたのだが、最後の最後までセイバーが士郎との契約を切ることを渋っていた。最後まで守り通すという騎士としての誓いに反するなどなどと言っていたが、


「その誓いも、誓った人物が死んだらおしまいじゃない?」


 という凛の一言で崩れ去った。体裁を捨て、士郎を守る為にセイバーはサーヴァントとマスターの契約を断ち、凛と再契約をした。契約の言葉が終わり、契約が結ばれると同時にセイバーの体から魔力があふれ出す。本来あるべき能力を取り戻したセイバーは、先程までの彼女よりも力強さが滲み出ていた。


「うわ……予想してたとはいえ、これはきついわね」


 自身の魔力の多くがセイバーへと流れ込んでいく感覚を味わう凛は、その貪欲とまでいえる量に辟易とする。士郎が正式に契約を結んでいたら、すぐに倒れてしまっていたであろうと思う。


「しかし、これならばアーチャー相手に打ち負けはしないでしょう。といっても、彼の宝具を防ぐ手立てがないのは変わりませんが」


 攻撃、防御の面ともに未だ不安の域を出ない。セイバーの持つ宝具の攻撃力は確かに強力だが、アーチャーの持つ宝具には敵わない。


「宝具を打たせないようにするしかない、か。その辺りのかく乱は……」


「――俺がやろう」


 静かに実体化したアサシンが切り出す。切り落とされた左腕の再生は終わったらしく、見た目は普通だ。それでも、まだ五割の力も戻っていない。完全回復を待つのなら、後二日はかかる。
 それまで待てば、という意見も出たが―――


「それだと時間がなくなるわ」


 それを否定したのはイリヤ。それには誰もが首を傾げる。時間がなくなる、とはどういうことなのだろうか。確かにサーヴァントの数は残り三騎であり、開幕から既にかなりの時間が経過はしている。それに、アーチャーの目的はセイバーと、聖杯の入手。未だアーチャーは聖杯を手にはしていない。
 そして、聖杯とはイリヤのことでもある。今ここにイリヤがいる以上、聖杯を呼び出し手に入れることはできない筈。だからこそ、アーチャーはアインツベルンの城へと赴いたのだ。


「時間がないって……聖杯は、その」


 アサシンが言いよどむ。召還されてすぐ、アサシンはイリヤから聖杯の正体を教えられている。それゆえに、アサシンは自らの願いを叶えることを放棄したのだ。今回は、ということになっているが……これを逃せば次があるという保障はまったくない。
 それでも、自らのマスターを生贄にし自分の願いを押し通すことなどしたくはない。アサシンはその自分の行動に後悔はしないと自らの心に誓える。


「えぇ、聖杯は私自身……というより、私の心臓といった方が正しいのかしら」


「イリヤの、心臓……!? な、なんだよそれ、何でイリヤの心臓が聖杯なんだ?」


「私がそういう存在だから、よ。アインツベルンは聖杯の器になるべき依代を用意する。それが私のようなホムンクルス。ここにいるリズやセラも、同じ存在なの」


 イリヤは確かに母体から生まれた。しかし、そのときから既にイリヤは人としてではなく、聖杯として生を受けているのだ。いわば、イリヤは魔術回路を人にしたようなもの。多大な魔力を持ちながらも、魔術師としての能力はほとんどない。
 マスターとして聖杯戦争に参加し、勝利し聖杯を手に入れることだけを義務付けられてイリヤは冬木へと赴いた。それ以外のことなど、期待されていないのである。
 凛だけはある程度予想していたのか、さほど驚きはない。しかし、感じている疑問だけが強くなっていた。


「なら、アンタがここにいる限り問題はないんじゃないの? イリヤの心臓がいるのなら、聖杯は――」


「――大本となるものがないから降霊できない、ということになるわ。えぇ、今までならね・・・・・・。私を捉えられなかった以上、別のモノを使う気よ」


 何かを含むような言葉。誰もが怪訝な顔をする中、士郎だけは何か言い知れぬ不安と予感を感じていた。


「前回の聖杯は不完全なままで召還されて、そしてセイバーと……キリツグに破壊されたわ。そして――聖杯の欠片が、ある一人の老人によって回収され一人の人物に埋め込まれた」


 心臓の鼓動が士郎の耳にはっきりと聞こえる。この鼓動の主は、周りにいる人物なのか。否、この鼓動は士郎自身のもの。何を言われるのか想像もできないのに、士郎は今紡がれる言葉が確実に悪いモノだと分かっていた。


「老人の名はマキリゾウケン。聖杯の欠片を埋め込まれたのは――その老人の孫娘、マトウサクラよ」


 尤も身近な存在であり、関わり合いになるはずのなかった存在の名前が、士郎を―――そして、凛を打ちのめした。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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