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二十二話

 深夜の衛宮家。いつもの如く、和気藹々とした夕食がすみ、衛宮士郎は姉(的存在)である藤村大河と、友人の妹である間桐桜を玄関から見送り居間でセイバー達と共に聖杯戦争に関しての話をしていた。
 既に聖杯戦争が始まって二週間が過ぎようとしている。それまでの間に出た一般人の被害は数知れず、それと共にサーヴァントの数も着々と減っていった。

 ライダーを始めとし、順にランサー、キャスター、バーサーカー……そして、遠坂凛のサーヴァントであるアーチャー。ライダーは彼らが相対し倒し、キャスターのルール違反によって召還されていたバーサーカーは、アーチャーが命と引き換えにして打倒した。そして、残りの二騎のサーヴァントは、ある一人のサーヴァントによって倒されている。

 ――十年前から現界し、前回万全の状態で召還されたセイバーすらも圧倒した、アーチャーのサーヴァント。アサシンの前に現れた、あの正体不明の存在である。


「……あんな奴に、本当に勝てるのか?」


 ぽつりと零される一言。あのアーチャーの規格外の強さを目の当たりにした士郎は、滅多にこぼさない弱音を吐いた。前回万全の状態のセイバーですら勝てなかった相手だというのに、自分と契約しているせいで弱体化している今のセイバーで勝てるのか。


「シロウ、勝てる勝てないの問題ではない。……私達は、勝たなくてはならない」


「そうよ、士郎。負けたら死ぬだけよ、私達を含める多くの人が」


 セイバーと凛に諭され、士郎は気弱になっていた自分の心を戒めるかのように頬を叩いた。そうだな、と力強く頷く。


「残ってるサーヴァントは、セイバーとアーチャー……そして、アサシンか」


 三人の脳裏によぎるアサシンとマスターであるイリヤの姿。あの二人と協力できれば、少しでも勝率が上がるのではないか。士郎は凛曰くへっぽこな頭でその考えをひねり出した。


「……そう、ね。本来のアサシンは戦闘力はほとんどないけど、彼に関しては別ね。セイバーほどじゃないにしろ、力になってくれるかも」


 難色を示しながらも、凛はアサシンと同盟を組むことを了承する。セイバーは反対するかとも思われたが、意外というかなんというか、特に反論することなく士郎の考えを肯定した。


「アサシンは確かに敵です。しかし、彼の人となりだけを取るのならば非常に好ましい。それに、アサシンの戦闘力は確かに頼りになるでしょう。彼も、こちらの要求を即座に跳ね除けることはしないと思います」


 アサシンのマスターは分かりませんが、とセイバーは続ける。士郎はアサシンと戦わずにすむと分かり、安堵する。会ったのは二度、戦いの最中とただ話をしただけの間ではあるが、それでも戦わずにすむのならその方がいい。
 と、不意に衛宮家に来客を知らせるチャイムが鳴る。来客がくるには、既に遅い時間だ。不審に思いながらも士郎は腰を上げて玄関へ。用心の為に凛やセイバーも後に続く。ただの不審者ならば、セイバーないし士郎一人で事足りる。

 衛宮家に訪ねてきたのは、彼らが予想しえなかった人物。アサシンのマスター、イリヤスフィールとその従者と思しき二人の女性。凛とセイバーは咄嗟に戦闘態勢を取ったが、どうも様子がおかしい。
 イリヤスフィールが子供のように泣きじゃくっているのだ。そして、一番おかしいのは……アサシンの気配がまったくしないこと。気配遮断スキルで姿を隠しているのかとセイバーは考えたが、それなら今泣いているイリヤを宥めてる為にすぐに出てくる筈である。
 士郎と凛も、それを考えたのか訝しげな顔をした。だが――――もっとも最悪な結果が彼らの脳裏に浮かぶ。


「イリヤ、相沢……アサシンは、どうしたんだ」


 自分でも声が震えているのを自覚しつつ、士郎はアサシンの行方をイリヤに尋ねる。咎められるような視線が、従者の二人から注がれるが聞かなければならないことだ。


「ひく……アサシン、変なサーヴァントに……やられて……」


 溢れる涙を拭うことすらせず、イリヤは言葉を詰まらせながら問いに答えた。最悪の予想が現実のものとなり、士郎達は表情を暗くする。玄関で話をしていては体が冷えてしまう、そう考え士郎は三人を居間へと通す。落ち着かせようとお茶をいれて差し出すが、手をつけようとしない。仕方ないかもしれないなと士郎は内心呟く。

 イリヤとアサシンの関係は、サーヴァントのそれではない。一見しただけであるが、兄と妹―――そう思えた。戦いを始めればそれは成りを潜めるが、日常生活ではほとんど兄妹同然なのだろう。
 だからこそ、イリヤはアサシンを失ってここまで取り乱しているのだ。――――ある事実に気付かずに。その事実を気付かせたのは、この中で尤も冷静な魔術師である凛。


「イリヤスフィール、アサシンは貴方の目の前でやられたの? それなら、貴方達もそのサーヴァントにやられている筈だと思うけど」


「いえ、アサシンはイリヤスフィール様を逃がす為に、殿を務めて下さいました。だからこそ、私達はこうして生き長らえているのです」


 イリヤの代わりに従者の一人、セラが答える。それを聞いて、凛は自分の中で浮かび上がった一つの可能性が現実味を帯びていくのを感じていた。
 それは――――


「なら、アサシンとのパスも完全に消えてしまっているのかしら?」


 ――――パスがなくなっているのなら、アサシンは既にこの世に存在していないだろう。逆に言えば、アサシンとのパスが残っているのならばアサシンは“まだ”無事だと言うことに等しい。
 凛の言葉を理解したイリヤは、すぐに涙を止めてをアサシンとのパスを意識する。アサシンを召還し、契約を交わして結んだパスは……残っている!


「……残って、る」


 呆然と呟くイリヤ。止めた筈の涙が再び溢れていく。悲しさからではない、嬉しさで涙が流れてしまう。それを聞いた士郎は、表情を明るくした。


「そっか、生きてるのか……良かった」


「当たり前だ、勝手に殺すな衛宮」


 庭から声が響く。全員が視線を向ければそこに、片腕を失い血だらけになりながらも笑みを浮かべるアサシンの姿。足を引きずりながら士郎達の下へ向かっていくが、体力の限界がきたのか地面に倒れこむ。


「お、おい、しっかりしろ!」


 士郎が抱き起こす。相手がアサシンである事を完全に失念している士郎に、セイバーは軽くため息をつく。だが、それも士郎らしさかと納得し、自らもアサシンの下へ向かう。
 見れば、アサシンの左腕は無理矢理引きちぎられたかのようになっており、体中が剣に斬られた傷を負っていた。相手は間違いなく、あのアーチャーであろう。


「アサシン、大丈夫……?」


 イリヤの不安そうな顔を見て、アサシンは苦笑しながら頭を撫でた。


「イリヤを残して死なないさ。でも、ちょっと疲れた……完全に回復するまで安静にしてないとな」


 そう言ってアサシンは、その姿を消していく。霊体化し、傷の治癒に専念する為であろう。完全に消える前に士郎達へ、


「イリヤを頼む」


 と言葉を残し、その姿は霞のように消えた。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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