2017 / 03
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二十一話

 打ち出される魔弾をぎりぎりで回避し続ける。だが、際限なく――比喩ではなく、事実――襲い来る“剣”の嵐により、アサシンの体はぼろぼろになっていく。
 行き場を失った剣の弾丸は、アインツベルン城の床へと突き刺さり瓦礫を生み出す。


「そら、どうした暗殺者。死に物狂いで避けてみせよ」


 魔弾の射手は、愉快そうに自分が放つ剣群を避け続けるアサシンの姿を眺める。黄金の鎧に、重力に逆らうように立っている金色の髪。そして、何より見たものに恐怖を与えるような真紅の目。
 口元を歪め、逃げ回るアサシンの姿を路肩の小石程度にしか思っていない。


「くそっ……なんなんだお前はっ」


「囀る許可を出した覚えはない。雑種は我を楽しませる事だけに集中しておればよい」


 剣弾が強まる。完全回避が辛くなり、アサシンの体はさらに傷ついていく。その姿を涙ぐみながら二人のメイドに体を押さえ込まれている少女が一人。


「離してっ、セラ、リズっ! アサシンが!」


「なりませんっ、アサシンは身を挺してイリヤスフィール様を逃がそうとしているのです。早くこの場を……」


「やだ、やだっ、アサシンを置いてなんていけないっ」


 セラとリーゼリットの腕を振り払おうとするが、力は普通の少女と変わりない。さらにリーゼリットにいたっては戦闘型のホムンクルス。肉体を使う戦闘を想定されていない、イリヤの能力ではどう足掻いても抜け出すのは不可能である。


「二人とも、早くイリヤを連れて逃げろ!」


「ふん、聖杯の器を逃がすと思うてか。そろそろ余興にも飽きてきたところだ。疾く去ね、汚らわしい暗殺者」


 男の手から直接放たれる剣。デュランダルという銘を持つその剣は、確実にアサシンの腕を貫いた。


「がっ!?」


 ぶちぶちという千切れるような音と共に、アサシンの左腕が吹き飛ぶ。骨すらも切り裂き、繋がりを失った腕は地面へと磔にされた。
 イリヤの悲鳴がホールに響く。完全に錯乱した様子のイリヤを抱えて、二人のメイドはその場を後にする。


「逃がさんと言っ……むっ!?」


 それを追いかけようとする男の頬を、何かが通り過ぎる。それは背後にあった壁へと突き刺さった。それは、柄に七ツ夜と書かれたアサシンの短刀。
 頬に手をやった男は、指先にぬるっとした感触を覚えた。目の前に持ってくれば、指先は赤く染まっている。


「……貴様、よくも我の顔に傷をつけてくれたな! よかろう、聖杯の器は後回しだ。先に貴様の醜い命、完膚なきまでに蹂躙してくれる!」


 怒りに表情を歪める青年。そして青年の背後の空間が歪み、そこから無数の武器の柄が現れた。荒い息をつきながら、アサシンは男を見据える。考えているのは、如何にしてこの場を生き残りイリヤの下へと戻るかだ。こんな所で死ぬ気は、アサシンには毛頭ない。
 自分の能力では、目の前にいる正体不明の存在に勝つことは100%不可能。故に、今は離脱して生き延びる事を考える。


(左腕は魔力供給で再生できるが、今は使い物にならない。俺の持つ宝具で、アイツに対抗できるものはない。……八方塞かよ)


 それでも決して諦めない。可能性がある限り、アサシンはそれを手繰り寄せてみせる。


「我の前から消えうせろ、雑種!」


 弾丸が打ち出される。一直線にアサシンへと向かっていった弾丸は、着弾した。衝撃で砂埃を巻き上げ、男の視界を塞ぐ。


「……」


 酷く気分を害したような表情をする青年。煩わしそうに腕を横に振るうと、砂埃が風に吹かれて流される。後に残るは、瓦礫の山――――


「ち、逃したか。無様に生き延びることだけに関しては、褒めてやってもよいか……」


 もう用は無い、と男は鎧を揺らしながら城を後にした。破壊の爪痕だけが残る、主を失った居城は静寂に包まれる。その城内に無数の瓦礫と、血塗れのアサシンの左腕を残して。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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