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プロローグ

 薄暗く広い部屋の中に風が吹き荒れる。魔力の奔流が、サーヴァントを召還した少女―――イリヤスフィールと、周りにいる人影を襲う。
 この魔力の猛り……確かにサーヴァントの召還には成功した。自身の中から魔力が急激に失われていくのを、イリヤスフィールは感じる。


(でも、触媒がないからどんなサーヴァントなのか……)


 ほとんど博打である。前回の聖杯戦争では、外来の魔術師……彼女の父親である衛宮切嗣には、かの騎士王・アーサー王の縁の品が渡されたという。だが、今回は著名な英雄の縁の品がなかった。
 アインツベルンの人間は、心底落胆した。だが、イリヤスフィールなら触媒などなくても大丈夫だ。そう、考えていたのだ。

 ――――彼女は、その為に作られたホムンクルスなのだから。

 魔力の暴風がやみ、イリヤスフィールは閉じていた目を開く。どんなサーヴァントがいるのか、と思いながら目の前には


「……ここは」


 どう見ても、ただの人間にしか見えない青年がいるだけだった。しかし、自身から目の前の青年へとラインが通っているのが感じられる。あれは、確かに人間という存在ではなく、抑止力の存在……英霊という存在なのだ。


「あなたが、私のサーヴァント?」


 ざわざわと辺りがざわめく中、イリヤスフィールは青年へと近づいていく。途中、『やはりホムンクルスには無理だったか』、『あんなひ弱そうなモノを召還するとは、恥曝しが』などという誹謗中傷の声が聞こえてくるが、彼女はそれを無視する。


「ん……そう、みたいだな。君とレイラインも繋がっているし、魔力も流れてる。あぁ、確かに俺は君のサーヴァントだ」


 周りの人間が次々と悪態をつきながら出て行くのを視線で追いながら、青年はイリヤスフィールへと歩んでいく。


「そう……で、クラスは? バーサーカーや、セイバーには見えそうにないけど」


「アサシン、だな。元々、そういう一族に生まれてたし、戦い方もそれに直結する」


 暗殺者のサーヴァント。その言葉に、イリヤスフィールは落胆する。せめて、三騎士のうちであってほしかった。アサシンは、キャスターの次に弱いとされているサーヴァントではないか。マスター殺しの能力しか持たない、単一特化型。

 だが、アサシンのサーヴァントには固定の英霊が呼ばれる。それを思い出したイリヤスフィールは、彼に真名を問うた。


「貴方、ハサン・サッバーハじゃないの?」


「いや、違う。俺は、相沢祐一って言う名前だ」


 青年――相沢祐一の言葉に、イリヤスフィールは眉を顰めた。自分の父親である、衛宮切嗣と同じような名前。それは即ち、目の前のアサシンが日本人であることを指している。
 そんな英雄、聞いたことも無い。マイナーすぎるのか、そもそも知られるような存在ではないのか……。


「そんな名前の英雄、知らないって顔だな。ま、無理もないよ。そもそも俺は過去の人間とは言い難いからな」


 彼女の心情を読み取ってか、アサシンは苦笑を浮かべた。ここにきてイリヤスフィールは、少女らし
い反応を見せる。


「どういうこと?」


 きょとん、とした表情。しかし、すぐに何かに気付いたのか思考の海へと潜っていく。アサシンはそんな彼女を腕を組んで見つめる。
 いや、アサシンもまた自らの思考の海へと沈んでいた。今この状況がどういうことであるのか。


(サーヴァント、クラスってことは当然、聖杯戦争だ。やっと……やっと願いが叶えられる。俺がいた時の、あいつらを笑顔にさせてやれる)


 彼が世界と契約し、英霊となったのはその願いを叶える為だ。かつて自分が生きた時系列での、あの悲劇をなくしその記憶を消し去る……それが彼の願い。
 彼が世界と契約した際に、一つの願いは叶えた。後は残りの願いを叶えれば、彼はもう何も思うことは無い。


(みんな、俺がいなくなって慌ててないかな。だけど、それもすぐになくなる。……聖杯への願いで、俺を含めた記憶を全部消し去れば)


 悲劇の記憶の消去――――それは、自分を含めた全ての記憶を消し去ることだ。それが終われば、自分は英霊の座に登録された守護者として、世界の掃除でも何でもしてやろう。


「……アサシン、貴方はもしかして未来の英霊とでも言うの?」


 思考の海から戻ってきたイリヤスフィールは、信じられないような表情と言葉でアサシンを見た。その言葉にアサシンは、正確にはちょっと違うがそんなところだ、と答える。


「頼りなさそうだとは思うが、よろしく頼むなマスター。やるからには、俺は必ず勝つ。そして、君に勝利を捧げよう」


 肩膝をつき、恭しく頭をたれる。それは彼女を自分のマスターだと認めた証拠であり、忠誠の儀式でもあった。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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