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二十話

 じりじりとイリヤはアサシンを引きずり、肩を組んでいたランサーから引き剥がす。それをニヤニヤと槍を肩に担いでランサーは見つめる。そろそろ戻らなければ、いけ好かないマスターが小言を言いそうであるが、このやり取りを見届けた後ならばそれもいいかと思えた。


「お、おい、イリヤ。あんま引っ張るなって」


 服が伸びるっ、と非難の声を上げるアサシンを無視して、ランサーからひたすら距離をとらせるイリヤ。ほのぼのとした雰囲気で、羨ましい関係だ。少なくとも、ランサーとそのマスターではこうは行かない。


「おい、アサシン」


 引き摺られていくアサシンを見送りながら、ランサーは声をかける。先程までの飄々とした声ではなく、真剣な声色にアサシンは引っ張るイリヤを宥めて、振り向く。


「自分のマスターは、好きか?」


 唐突に投げかけられる、意図の読めない質問。眉を顰めて、その意図をどうにかして掴もうとするが、分からない。とりあえず、ランサーの質問に対する答えなど、考える時間すらいらない。


「当たり前だ。イリヤは俺の守るべきマスターだし、大切な人だ」


 真摯な答えを提示する。聞きようと、聞く立場からすればその言葉はある意味、告白に近い。実際、イリヤはアサシンの言葉……特にその後半の台詞に顔を赤くしていた。
 その言葉を聞き、ランサーはマスターの方もいいサーヴァントにめぐり合えたんだな、と感じた。信頼、絆……と呼べるものでこの二人は繋がっている。それが、酷く尊いものだと感じた。


「そうか……なら、命がけで守れよ。俺は、その機会を永遠に失っちまったからな……」


 自嘲気味な苦笑を浮かべる。彼には運がない。対等に付き合えるマスターと出会えたが、それを守る機会すらもらえず失い、今やただの傀儡同然。彼はこんな制限された戦いなど、望んではいないというのに。


「じゃ、俺はそろそろ行かせてもらうわ。アサシン、さっき言った事考えとけよ。酒はこっちが用意しといてやるぜ」


「…あぁ、こっちもツマミぐらいならなんとか用意するよ。酒酌み交わす前にやられたら、恨むからな」


「ははっ、そりゃこっちの台詞だ」


 フェンスを乗り越え、ランサーは去る。私を無視するなーとぽかぽか叩いてくるイリヤを、アサシンは肩に担いでビルの階段を下りていく。先程の質問がなんなのか、アサシンには分からない。だけど、何かランサーにとって耐え難い事があったのかは確かだろう。
 お前は、そんなことになるんじゃない、という忠告のつもりなのだろうか? 


「何考えてるの、アサシン」


「んあ……? なんでもない」


 苦笑を浮かべた。ランサーに言われるまでもない、イリヤは自分の全てをかけて守り抜いてみせる。だけど、志半ばで倒れてしまったときは誰がイリヤを守るのだろう。聖杯戦争に味方などいない。いるのは敵だけ……と考え、アサシンの脳裏に一組のマスターの顔が浮かぶ。


(あぁ、衛宮ならなんとかしてくれそうだ)


 考えて安心できる。少し話しただけだが、衛宮士郎の人柄と性格を考えれば二つ返事で受けてくれるだろう。もっとも、それは非常手段ではあるのだが。可能な限りイリヤは、自分自身の力で守ってみせる。

 地上まで辿り着き、アサシンはイリヤをおろす。手を差し出して、二人は仲の良い兄弟のように夜の新都の街を歩いていく。未だサーヴァントとマスターによる、平穏なる日常は続く。だが、刻一刻と終わりは近づいている。そして、終わりは一瞬にして全てを無へと返すのだ。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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