2017 / 08
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十六話

「全ての人を救う正義の味方なんて、ありはしないんだ。衛宮、お前は悪と呼ばれる存在まで、救えるって言うのか? 誰もが悪と認め、そいつ自身も悪だと断言する存在を」



 アサシンの辛辣な言葉に、士郎は返答を返せない。それは、言峰教会で言峰神父に言われたのと同じ言葉。


『正義とは明確な悪があってこそ成り立つものだ。悪がなければ、正義というものも存在しない』


 事実だった。正義と悪は表裏一体。光と闇の関係のようなもの。アサシンの言っている事は、言峰神父の言っている事と同じ。しかし、言峰の時は反論できた事が、アサシンには出来ない。
 アサシンの言葉には、言峰以上の重みがあった。だからこそ、士郎は即座に反論できない。

 悪を倒す事が、正義の味方のすべき事。なら、その悪さえもお前は救えるのか。……分からない。士郎に答えは出せない。否、答えを出すことなど出来ないのだ。
 矛盾した正義の味方。それが、今の衛宮士郎。


「……わから、ない」


 悔しさで、声が震える。父から受け継いだ理想を、誇りを、絶対的な自信を以って誇れる事が出来ないから。
 ―――が、アサシンの次の言葉は士郎の、いや、全員がまったく予想していなかった言葉だった。


「それでいいんだよ」


『……え?』


 士郎に問いかけた時の言葉のように鋭くない、寧ろ穏やかさすらあるような声音でアサシンは士郎にそう言う。予想しなかった返答に、士郎のみならず他の面々も疑問の声を上げた。


「そもそも、正義と悪なんてものはないんだ。いや、悪がなく正義だけがある。矛盾してるだろうが、戦いあう者にとっては自らが『正義』なんだよ。だからそこに、『悪』なんてものはない」


 ……そう、絶対的な正義と悪などない。争い合うものにあるのは、互いに譲れない正義だけ。その正義に立ち塞がるものが、悪となるのだ。
 そして、自身に正義はないと分かっていても止まる事が出来ない、止まれない者。そういった者が、自らを悪だと宣言する。所詮、正義と悪という言葉は、その人が持つ心次第なのだ。
 アサシンはそう言う。士郎にとっては、思ってもみない言葉。


「だから衛宮の分からないって言葉は、間違っていない。もしお前が、その悪だと言われる人物を救いたいと言うなら、それがお前にとっての正義なのさ」


 話はこれで終わりだ、とアサシンは残りの茶を啜る。衛宮士郎にとって、このアサシンの言葉は一途の希望となった。回りくどい言い方だが、要約すればお前の理想は間違っていないんだ、と言っている事になる。それが、衛宮士郎にとっての救いの言葉。

 そして、アーチャーにとっては絶望的な言葉となる。自らの理想に裏切られ、人からも裏切られ続けたアーチャー。彼は、ただ不器用にかつて持っていた理想を貫き続けた。そしていつしか、ただ闇雲に敵を排除する事だけを考えていた。
 そこに、本当に正義はあったのか――――?


「……オレは、一体何の為に」


 誰にも聴こえぬ呟きが、アーチャーの口から漏れた。先程まで瞳に篭っていた憎悪は消え、残っているのは悲しみの感情。そして、戸惑い。
 アサシンの言葉は、衛宮士郎だけでなくアーチャーにも影響を与えていた。


「ま、捕捉するとだ。今のは俺の持論。鵜呑みにするもしまいも、お前次第さ」


 あー、らしくねーと身悶える。そんなアサシンの姿を見て、士郎が、イリヤが笑いを浮かべ、凛とセイバーの二人も微かに笑いを浮かべた。アーチャーだけが、その言葉の重みを胸に抱えて。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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