2017 / 10
≪ 2017 / 09   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - - - -  2017 / 11 ≫
*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


十五話

「ならば、アサシン……いや、あえて相沢祐一と呼ばせてもらうが。貴様は何故、“英雄”などというモノになったのだ?」


 暗く澱んだ瞳で、自分をみるアーチャーにアサシンは一瞬だけ、恐怖を覚えた。あの瞳は見た事がある。あれは、何もかもに絶望しきった瞳だ。そして、とても悲しい瞳。
 英雄になった理由。アーチャーに問われ、アサシンは我が身を振り返る。しかし、アサシンは別に英雄になりたかったわけではない。自分の我が儘を、願いを叶えてもらう為に世界と契約したのだ。その願いも、まだ完全に叶えられたわけではない。その為にアサシンは、聖杯を欲していた。
 その聖杯が、自分のマスターであるイリヤの心臓を触媒にする事を知ってからは、既に聖杯を手に入れる事は諦めている。今の彼の望みはたった一つ。聖杯戦争における、イリヤの生存。ただ、それだけだ。


「別に英雄になりたくてなったわけじゃないさ。ただ、俺の願いをかなえる為に世界と契約しただけだし」


「望んで英雄になったわけではない、という事か。なら貴様は守護者というものについてどう考えている」


 続けざまに違う質問を叩きつけられる。アーチャーの瞳に宿る狂おしいまでの憎悪と殺意の感情。それを認めつつ、アサシンは真摯に質問に対する考えをまとめていく。
 英霊として契約したものは、世界の抑止力として駆り出される事がある。霊長の意思が無意識に作り出す、人類全体の保身を確立する為に英霊は守護者として世に召還され、世界のバックアップを一身に受けてその人類に仇名す存在を殺すのだ。その後は何も残らない。召還された守護者はすぐに座へと帰還する。その召還された記憶も残らぬまま。
 世界の掃除屋。それが守護者というモノだろう。


「報われない存在、といった所かな。霊長の意思が無意識に死にたくないと望み、英霊は守護者として現代に具現化する。そして霊長に仇名すものを抹殺し、その召還された守護者は記憶を消されて座へと帰還する。世界の掃除屋、って所だろう」


「そう、死後もただ世界に奴隷のように働かされ、抑止力として人類に仇名すモノを消させられる。だからこそ、英雄などになるべきではないのだ。英雄は誰も救えない。万人を救える正義の味方など、誰にも決してなれやしない。オレ達に出来るのは死人の山を作り出すことだけ」


 憎悪が声にまで篭る。そのアーチャーの言葉に反論する存在が一つ。セイバーのマスターであり、正義の味方になる事を夢見ている男、衛宮士郎。


「そんな事ない。英雄になれれば、今まで救えなかった人達を救う事が出来る。正義の味方にだって、絶対になれ―――」


「無理だよ、衛宮士郎。貴様は、正義の味方になれなどしない」


「ふざけんな、何でお前にそんな事を言われなきゃならないんだ!」


 アーチャーと士郎による口論。互いに心の底から相手を嫌悪している二人だからこそ、ここまで激しくぶつかりあう。衛宮士郎は正義の味方という理想を信じて、アーチャーはそんな物はただの妄言でしかないと確信しているが故、分かり合える事はない。激しくヒートアップする二人を止める為に、セイバーと凛がそれぞれ押さえ込もうとする。
 しかし、彼らを止める事は出来ない。衛宮士郎はアーチャーの考えに、アーチャーは衛宮士郎のあり方を心底嫌っている。それが解放された今、二人を止められるものはいない。


「衛宮、アーチャーのいう事は正しいよ」


 そこに割り込む、アサシンの声。お前まで、と顔を顰めながら士郎はアサシンを睨みつける。和やかな雰囲気から一転、殺伐とした空気になった居間の中、イリヤだけが心細そうにアサシンの横に張り付く。
 アサシンの同意に、アーチャーはその通りだと答える。


「全ての人を救う正義の味方なんて、ありはしないんだ。衛宮、お前は悪と呼ばれる存在まで、救えるって言うのか? 誰もが悪と認め、そいつ自身も悪だと断言する存在を」


「そ、それは――――」


 アサシンの言葉に答える事が出来ない。そう、正論すぎて答えられないのだ。確かに衛宮士郎は正義の味方を理想としている。しかし、正義の裏には悪がある。その悪ですら、自分は救えるのか。
 それに答えを出せず、士郎は力なくうなだれた。
スポンサーサイト


この記事へのコメント

この記事へコメントする















神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。