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十二話

 衛宮家の居間に吹き荒れる寒気の嵐。その発生源たる少女、遠坂凛は傍目から見れば見惚れてしまいそうなほどの笑顔を振りまいている。
 だがしかし。彼女を本当に知る者はそうは思うまい。現に彼女の本性を知る衛宮士郎と、一番身近で彼女を見続けてきた彼女のサーヴァント……アーチャーは凛の笑顔を引き攣った表情で直視していた。


「で、衛宮君。ど・う・し・て、ここにイリヤスフィールとそのサーヴァントがいるのか・し・ら?」


 声音は優しい響きで、どことなく甘ったるく感じられる。彼女の本性を知らなければ、骨まで蕩けていたに違いないと衛宮士郎な心の片隅で思う。しかし、骨が蕩けるどころかみしみしと力任せに砕かれているような感覚しか今の衛宮士郎には感じ得ない。
 そして、彼のサーヴァントであるセイバーも得体の知れない恐怖に身を震わせていた。表面上は無表情だが、体が細かく震えている。


(り、凛はあまり怒らせるような事はしないでおきましょう)


 最強のサーヴァントであるセイバーですら竦みあがらせる遠坂凛の「コロス」笑顔。ある意味、最強なのは彼女なのかもしれない。その笑顔を見ていた二人の少女と青年――件のイリヤスフィールとアサシンである――は、それぞれ対照的な表情である。
 とりあえずイリヤは純粋に怯えた表情でアサシンの背中へ隠れていた。魔術師として負けるつもりではないが、今の凛には勝てる気がしない。怖すぎて顔を直視したくもない。対して、アサシンは半笑い。何かを思い出しているような、そんな笑いだった。


(あぁ、なんか香里を彷彿とさせるな……同じタイプだ)


 自身の過去に思いを馳せる。英霊となる前、ただの人間で学生であった時の記憶。アサシンではなく、ただの相沢祐一であった時の思い出。様々な記憶が走馬灯のように流れ、笑いと楽しい記憶がよぎった時思わず苦笑が浮ぶ。懐かしい物を見るかのように、士郎と凛の姿を見る。
 それに気付いた凛とアーチャーがアサシンの方を見る。眩しそうに、懐かしそうにこちらを見つめるアサシンの瞳の奥に、寂寥と暖かさを見出し思わず顔を見合わせる。


(なんか、あれが本当にあの時のアサシンなのかしら)


(間違いはない。だが、あの時とは印象が違いすぎるな)


 令呪を通しての念話。二人と同じ事を、アサシンの姿を見た衛宮士郎とセイバーも考えていたとは誰も知らない。威圧感が消えたのを感じ取ったイリヤは、ゆっくりとアサシンの背中から顔を出す。何気にあの極寒の地獄から解放された衛宮士郎も、アサシンに感謝の念を覚えていたのは彼だけの秘密である。


「別に……日のある内は戦う気なんてないわ。アサシンもやる気がないし、遊ぶ方が先だもの」


 そんなイリヤの頭を微笑を浮かべながら撫でるはやはりアサシン。恥ずかしげにしながらも、抵抗することなくイリヤは甘受している。父親のような表情のアサシンに、四人はさらに困惑を深めるばかり。


「ま、今日はたまたま歩きついでに会っただけさ。それで軽く親睦を深めてみようかな、と」


 聖杯戦争に親睦も何もないか、とアサシンは自分で言って笑う。敵意も殺気も含みも何もない、純粋な笑いを見た凛は溜息を吐いて頭を抱えた。とりあえず、こちらももうやる気の欠片も残っていない。向こうもやる気がないのなら、こんな白昼堂々やる事もないかと判断。
 そう決断した後の彼女の行動は早かった。


「アーチャー、お茶。士郎、お茶請けか何か出しなさい」


 その時、アーチャーと士郎の二人の心情は完璧に一致した。まったく反りが合わなく、互いに敵意すら抱いているがこればかりは仕方ない。


((このあかいあくまめ……))


 内心毒づきながら、言われたとおりに職務をこなす執事能力を備えたアーチャーと士郎であった。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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