2017 / 03
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十話

 セイバーが本気で泣きそうになっているのを、マスターである士郎は困惑しつつ、アサシンは笑いそうになるのを堪えながら見つめる。イリヤは未だに涙目でセイバーを睨みつけている。
 とりあえず、このままではまずいので士郎はセイバーを宥める。別に何も思ってないから、と落ち着かせる。セイバーも徐々に落ち着きを取り戻し、暫くの後にいつもの平常なセイバーへと戻った。その間、アサシンもうーっとばかりにセイバーを睨みつけていたイリヤを抱きしめ、宥め続けていた。


「イリヤ、そんなに怒っちゃダメだ」


 突如アサシンに抱きしめられたイリヤは、セイバーに対する怒りも忘れ顔を赤く染め上げる。すらっとしたアサシンの体の肉付きが、アサシンの現代風の服をすり抜けてイリヤへと伝わる。
 あぅ、あぅと軽く混乱状態を引き起こしながらイリヤは自分の顔のすぐ横にあるアサシンの顔を視界にいれないように努力する。今見てしまうと、保ってきている理性がぷちぷちと音を立てて千切れるのが、容易に想像できた。
 自分はアインツベルンの魔術師だ。それが自分を抑制できなくて、何が魔術師だ、マスターだ、聖杯だ。ほら、冷静になってみろ。ただ自分のサーヴァントのアサシン(異性)に抱きすくめられているだけ。こんな物、冷静になって見てみればどうって事――――


(無い筈ないわよーーーーー!!!!!!)


 心中で絶叫。タイムラグ数秒なしにイリヤスフィール・フォン・アインツベルンという魔術師の心中はアサシンという名のウィルスによって全てを侵食され尽くす。
 魔術師である前に、聖杯である前にイリヤは一人の少女なのだ。喜怒哀楽とて、存在している。好意という感情もあるのだから、こんな風にされれば照れてしまうのは、思春期真っ盛りの少女にとっては当然だろう。思春期なのかという突っ込みはいらない。


「イリヤ、セイバーだって自分のマスターを守る為に言ってるんだ。当然の事なんだから、許してやろう。な?」


 最後の言葉と共に、少し顔を離して微笑む。その笑顔に、イリヤはもう完全に降参宣言。スリーアウト満塁主力バッター、ピッチャーの魔球に沈む。


「アサシンがそう言うなら……許してあげる」


 ぎゅっと抱きつく。ははは、と苦笑しながらイリヤをそのまま抱き上げる。猫のようにイリヤはアサシンに擦り寄り続ける。


「ま、悪かったなセイバー。さて、行こうか、セイバーのマスターさん」


 士郎はセイバーを連れて、アサシンはイリヤを抱き上げながら深山町の商店街を後にする。イリヤを抱き上げるアサシンの後姿を、ケーキ屋のお姉さんが頬を染めながら見つめていた。
 彼女の脳内では、イリヤは自分であり抱き方はお姫様抱っこに摩り替わっていた。


 途中でイリヤを降ろし、アサシン達は歩き続ける。イリヤとセイバーは無言で、士郎はかなりフレンドリーに話しかけてくるアサシンの言葉に戸惑いながらも友好的に答え続けていた。
 士郎は思う。


(……本当にサーヴァントなのかな。話してる限り、学生にしか思えないんだけど)


 話してくる内容も、音楽の事、テレビの事、政治の事、料理の事、服の事など様々だ。正に現代若者ばりばりの装いである。きっと、穂群原学園の制服を着て紛れ込めばごく自然に溶け込めるのではないのか。


(――そんな事すると、遠坂が怖いか)


 脳裏にあかいあくまの姿がよぎる。彼女とは今停戦協定を結んでいる。期間に関しては、アサシンの撃退まで。そのアサシンとこうして和気藹々と雑談を交わしているというのは、妙な感じである。
 苦笑しながら歩き続ける。ほら、すぐそこには自分の屋敷である武家屋敷が広がってきた――――。

 これがまた、大きな波紋を呼ぶ事になるのは、士郎はともかくセイバーとアサシンには分かっていたのだが。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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