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一話

――彼は横を歩く己のマスターである、小さな少女を見下ろす。自分の横を楽しそうにこちらを向きながら歩く、その少女は笑顔だ。
それに自然と、微笑を浮かべる。

……こんなに心が温まるような事は、いつぶりであろうか。英霊として契約し、ただ聖杯だけを求めていた自分は、召還される事もなく英霊の座で、少しずつ、少しずつ自分の心を冷やしていった。
そして、念願の聖杯戦争のサーヴァントとして、漸く召還されたと思えば、聖杯とは今目の前にいる少女だと言うではないか。
聖杯を使って自分の願いを叶えるという事は、目の前にいる少女を犠牲にするという事だ。

……そんな事できるわけがない。確かに、自分は奇跡を望んで英霊として契約した。だが、他人の命を犠牲にしてまで望めるわけがない。ましてや、彼女達がそんな事を許すはずもないだろう。

だから、自分に出来るのはこの少女を聖杯戦争の勝利に導く事だけ。自分の願いを叶える事は出来ないが、彼女達が悲しむような事にならないだけマシであろう。それでも、彼の心は奇跡を望んでいる。



「どうしたの、アサシン?」



立ち止まり、こちらを見上げながら少女は彼……アサシンの名を呼ぶ。その表情は何故かは分からないが、酷く不機嫌そうだ。



「いや、何でもないよマスター」



「もう、イリヤで良いって言ってるのに」



今度こそ本当に少女……イリヤは不機嫌になってしまう。それに慌てるのはアサシンだ。イリヤと同じ目線までしゃがみこみ、顔を覗き込む。



「分かった分かった。イリヤ……許してくれ、な?」



ちゃんと自分の名を呼んでくれたアサシンに対して、イリヤは嬉しそうな顔をする。うん、と頷きアサシンの手を引きながら歩き出す。

今から向かうのは、聖杯戦争の管理役がいるべき教会だ。そこに、戦うべき他のマスターがいる。イリヤは嬉しそうに歩く。そこからは、今から殺し合いをしにいくような雰囲気は何処にもない。
イリヤには、善悪の感情がないのだ。殺す、という事になんの躊躇いも持っていない。彼女がこの聖杯戦争に参加した目的の一つに、自分を捨てた父親の息子……彼女にとって弟に当る人物を殺す事がある。
はじめは、そんな事させたくない一身でアサシンは止めた。しかし、聞き入れてもらえず今に至る。出来る事ならば、この少女には血で体を汚して欲しくはない。
……そんな事、出来るはずがないのだ。この戦争に参加した以上、血に塗れる事は必須。ならば、自分はこの少女の盾となり矛となろう。



(ごめんな、皆。奇跡を起こすのは、今回は諦めないと駄目みたいだ)



アサシン――真名・相沢祐一はイリヤと手を繋いで歩きながら、頭上に広がる深い星空を見上げて、かつて共に時を過ごした少女達に、わびた。
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神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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