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突発的妄想SSの記事一覧

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実験作十四作品目。


 はて。

「あら、飲まないの?」

「生憎と紅茶は好きでなくて」

「折角私がいれてあげたのに、飲まないのかしら?」

「頂きます!」

 なんで僕はこんな所で怯えながら紅茶を飲んでいるんだろ。個人的には紅茶じゃなくて、緑茶の方がいいんだけど……紅茶はなんというか、独特の味がどうにも好きになれない。
 いや、紅茶のよしあしはどうでもいいんだよ。僕の疑問は、なんでUSCさんの家に僕がいて紅茶を飲んでいるのかってことなんだよ!

(わざわざUSCさんに会いに来るほど、僕はマゾじゃないんはずなんだけど)

 事実、会いに来る理由もなければ会いたいと思う理由もない。だって怖いんだよこの人。人間友好度:最悪ってAQNの幻想なんたらって本に書いてるし。僕を見つけるといじめてくるし!

「あまり乙女の顔をじろじろを見るものじゃないわよ」

「乙女って誰のこと」

「私に決まってるじゃない」

「乙女(笑)」

 僕は悟ったね。よく"ひぎぃと言わせる"って使われるけど、実際にそんなの出るわけないと思っていた。でも、人間本気で痛みを感じればひぎぃと言うことがあるんだと。
 腕が本気でへし折られるかと思ったよ。痛みで涙が滝のように出てくるし。暴力反対、乙女はこんなことしないと思う。

「失礼なこと言うものだから、つい」

「ついで人の骨を折る寸前まで痛めつけないで欲しい。僕はマゾヒストじゃないから喜ばないよ!」

「ごめんなさい、許して頂戴」

 悪びれずUSCさんが笑いながら言う。くそぅ、仕返ししたいけどするとこっちの命が危うい。どうにかして仕返しじみたいものは出来ないものか。やられっぱなしというのは非常に気分が悪い。ストレスで胃がむかむかしてくるから、健康の為にも仕返しというのは大事。

「もうUSCさん爆発すればいいのに」

「貴方もいい加減、その呼び方やめなさいよ。長ったらしい上に、不愉快なのよ。普通に呼びなさいな」

「嫌なこったパンナコッタ」

 パンナコッタ? と首を傾げるUSCさん。ええい、ちょっとだけ可愛いと思った自分の心が嫌だ。見た目少女でも目の前にいるのは危険物なのである。そりゃもう、プルトニウムとかウランとか……そういうレベルの危険物。見た目が美少女じゃなければ諦めもつくというのに!
 ええい、なんで幻想郷にいる妖怪とかはこう女の子ばかりなのか。もりりんみたいに男の妖怪はいないのか! 男としてはかなり肩身が狭いんだぞコンチクショウ!

「変な事言うのはいつものことよね」

「誰が変人か」

「貴方じゃない。少なくとも、私とこうして向かい合ってまともに喋れる数少ない人間を、私は変人として認識してるわ」

「USCさんが怖いのは僕も一緒だよ! 出来るなら関わり合いになるのはごめんです」

「そうやって馬鹿正直な所、私は嫌いじゃないわ」

 くすくすと笑うUSCさんが少女少女してて困る。ほんと、この人ドSじゃなかったらマジ結婚して欲しいんだけど。これは恥も外聞も恐怖も投げ捨て、マッドさんに性格矯正できる薬とか頼むべきだろうか……? 本気で悩む。
 理想はマッドさんに薬だけ作らせて、それを奪い取って生贄を捧げて逃げることだけど。生贄には自堕落姫とか新参ホイホイ、兎詐欺とかが一番か……!?

「何考え込んでるのよ」

「いえなんでもないです」

 とりあえず保留にしよう。今はまず、この場から生きて帰ることが何よりも大事。ここ最近、僕の残機は減っていく一方なのでこれ以上は本当にマズイ。リアルに死ぬ。
 紅茶を持つ手がぶるぶると震えるのは仕方ないよね!

「……そこまで怯えなくても」

「貴方が今まで僕にしてきた仕打ちを考えてから言って!?」

 何度目覚めそうになったことか。そうなったら死にたくなるので必死で抵抗しましたよ。見た目美少女に責められるとか、私達の業界ではご褒美ですとか言わないよ僕は。

「USCさんは僕に構わず、少女臭と喧嘩しててよ」

「嫌よ、面倒くさい。あんな年増相手にするの。それに、喧嘩じゃなくて殺し合いになるもの」

 貴方も相当年増だよね、とは思ったけど口に出すと間違いなくひぎられる。ひぎぃと言うのはエロゲの中の女の子だけで十分だよ。
 少女臭を年増呼ばわりする妖怪、USCさんぐらいだよね。

「さて、本題だけれど」

「え、何か用事あったの?」

「じゃなきゃ連れてこないわよ。ちょっと畑の手入れを手伝って頂戴な」

 ひまわり畑の世話とか、また面倒な……。でもお仕事ならやらざるを得ない。ちゃんと給金もくれるみたいだし、いっちょ働こうか。
 お仕事しないと生きていけないからね。




 USCさん=アルティメットサディスティッククリーチャーさんと呼んでます。長ったらしいね! そのうち面倒くさくなって改名させたりするかも。
 時間軸とかストーリーとか関係ないよ。いきなり場面飛んだり、展開トランザムとかあるよ!

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リリなのクロス

「はやて……っ」

 管制人格と祐一が戦う様子を、ヴィータは口元を噛み締めながら眺めていた。今すぐにでもこの戦いを止めたい、だが例えとめても闇の書に取り込まれたはやてを救い出す方法がない。しかし、このままにしておけば万が一にでも祐一が管制人格ごとはやてを殺してしまう可能性もある。

「どうすりゃいいんだよ……シグナム、シャマル、ザフィーラ……」

 書に取り込まれ消えてしまった仲間の名が口から出る。祐一がなぜ、自分を助けるような真似をしたかは分からない。だが、今ここで自分がこうして存在している以上、取り込まれてしまった仲間達の為にもはやてを助けることが出来る。
 しかし、その方法が考え付かない。こうしている今も、戦いは続いている。

「くそ、なんも考えつかない……」

 こういう時、シャマルならば何か考え付いただろうかとヴィータは思う。自分達の参謀役であった彼女が残っていれば、この状況を打開できる策を捻り出したかもしれない。

「あたしは、はやての為に何も」

「ヴィータちゃん!」

「……高町、なんとか」

「もうっ、なのはだよ、高町なのは」

 ごめん、と謝るヴィータには元気がない。無理もないかとなのはは表情を落とす。守るべき家族を守れず、自分一人だけが取り残され、愛する主は闇の書と同化。そして吸血鬼と死闘を繰り広げている。
 悔しさでヴィータの目に涙が浮かんでいた。

「助けよう、ヴィータちゃん」

「ぇ……?」

「はやてちゃん。きっと、何か手があるはずだよ! このままじゃ、吸血鬼さんか闇の書さん……ううん、はやてちゃんのどっちかがいなくなっちゃう。そんなの駄目だよ!」

 不屈の心。それが高町なのはの強さの理由。彼女は決して諦めない。どんな苦境に立たされようとも、彼女には諦めるという言葉はない。PT事件の時も彼女はフェイトと友人になることを諦めなかった。

「助けよう、ね?」

「……あぁ。はやてはあたしの大切な家族だ。いや、はやてだけじゃねぇ、シグナムもシャマルもザフィーラも、あたしの大切な家族だ!」

「私も手伝うから、はやてちゃんを助けよう。きっと、なんとかなるよ!」

 敵対していたというのに、なのはは自分やはやての為に助けてくれる。ヴィータの目に思わず涙が溢れるが、今は泣いている暇はない。バリアジャケットの袖口で涙を拭い、相棒であるグラーフアイゼンを構えなおす。フェイトにアルフ、ユーノも合流。
 まずどうするかを考え、祐一と管制人格の戦いを止めるのが先決だと判断。リーゼロッテとリーゼアリアは、つい先程到着したクロノにより保護、移送されている。

「いくよ、ヴィータちゃん、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん」

「おう!」

 先制はなのは、彼女がもっとも得意とする魔法・ディバインバスター。砲撃モードのレイジングハートを構え、魔力を抑えて放つ。それは戦いあう祐一と管制人格を引き離すように、彼らの間に割り込まれた。

「チッ」

「紅の鉄騎、何故邪魔をする」

 戦いに水を差され、祐一は不機嫌そうに、闇の書の管制人格は無表情にヴィータ達を見る。その頬には未だ流れる涙。

「うるせー! 管制人格、はやてはどうした!」

「……主は眠っている。私の中で、幸せな夢を見ながら。不自由のない脚、守護騎士達との平和な日々……」

 それははやてが夢見ていた理想。そして、守護騎士達も望んでいた未来。その為に汚名を着てまでリンカーコアの蒐集を続け、闇の書を完成させようとしていたのに……その結果が、ヴィータ以外の守護騎士の消滅、そして今はやてをも失おうとしている。
 闇の書の暴走による、この次元世界諸共。

「私は、主の望みを叶えるだけだ……主、愛しき守護騎士に害を為すこの世界を滅ぼし、主が望む夢を叶える」

「これが、はやてちゃんの望み? 違う、はやてちゃんはこんな事望んでない! どうして……っ」

「お前達も、眠れ」

 血の様に赤く染められた魔法の刃を生み出し、なのは達へ向けて放つ。それを回避、防御、打ち落とすなどそれぞれが効率的であろう対応を行う。血濡れの刃――ブラッディダガーは祐一にもその牙を向く。襲い来る刃を全て腕で叩き落すが、その度に魔力が徐々に削られていく。
 避ける、という選択肢は選べない。向かってくる量がそれを選ばせない。

(本当に厄介だな、この世界の魔法は……魔力は血で補えるが輸血パックも無尽蔵じゃない。手持ちは後二袋、無駄遣いする余裕はないな)

 再び降り注ぐブラッディダガー。だがそれは祐一の前に立ちふさがるようにして現れたなのはのプロテクションによって防がれる。

「なんのつもりだ?」

 頼んだ覚えはない、と視線は冷たい。言葉にはしないが、これ以上魔力が削られないことに関しては助かっていた。その冷たい目に怯みながらも、なのはは気丈に振舞う。

「あの、はやてちゃんを助けるのを手伝ってくれませんか?」

「助ける理由がない。そもそも、俺があの子供を助けてなんのメリットがある? あのわけのわからん本に取り込まれているようだが、それなら後腐れなく一緒に滅ぼせばいいだけだろう」

 その方が面倒がなくていい、と零す。敵対する以上、敵は倒すのみ。下手に情けをかけて生かせば、いつかまた牙を向く。ならば今のうちにその目を刈り取ればいい、というのが祐一の考えだ。

「はやてに手ぇ出してみろ、そんときゃあたしが潰してやる」

「……ふん、麗しい主従愛なことだ」

「違う、はやてはあたしの大事な家族だ。シグナムも、シャマルも、ザフィーラもだ」

 家族という言葉に、祐一の目が一瞬揺れる。もう会うことが出来ない二人、姿も微かにしか思い出せない父、自分を生んですぐに死んだ母。呼吸と共に生まれた動揺を殺す。
 祐一の下にフェイト、ユーノ、アルフが集う。

「闇の書はこの次元世界を滅ぼそうとしています。この世界が滅べば、貴方も流石に生き残れないでしょう?」

 無論だ。いかに祐一が死徒で復元呪詛による再生を持っていたとしても、肉体全てがなくなればそれも意味がない。世界が滅ぶ、言葉にすれば陳腐な一言でしかない。しかし、嘘ではないのだろう。

「世界崩壊、か。この世界の抑止力は何をして……いや、ここは俺の知る世界じゃない。抑止力自体が存在しない、か」

 本来ならば、世界の危機が訪れれば抑止力が働きその滅びの要因を排除しようと動く。ただし、抑止力の守護者が現れるのは決まって事が済んだ後、それ以上被害が広がらぬようそこにあるモノ全てを滅ぼす為だ。
 あれがどういった代物か祐一にはわからないが、少なくとも人の手によって創られた物なのだろう。ならば動くのは霊長の抑止力か、それとも世界の抑止力か。恐らくは前者だと思われるが、それは祐一のいた世界での話。
 この世界には抑止力が存在しえないのだろう。だが、そこまで考えて祐一は否と考える。

(抑止力が働く=守護者が現れるじゃない。抑止力によって動かされた人間――英雄がいる。なら、ここにいる奴らが全て抑止力によって集められたとしたら……俺も、その一人というわけか)

 この考えが正しいかどうかはわからない。しかし現実は滅びの原因はここにあり、それを良しとしない者達が集まっている。祐一自身は魔法がどういったものかを知るためにここにいると思ってはいるが、それが抑止力によって後押しされたわけではないと否定することも出来ない。
 吸血鬼、死徒といっても所詮は世界にとっては小さな存在。抑止力によって踊らされているだけなのかもしれない。

「……ハ、とんだ道化だ」

「え?」

「こっちの話だ。やるのならさっさとしろ、出来うる限りは手を貸してやる。だが、少しでも面倒だと感じれば俺は取り込まれた子供ごと殺すぞ」

 なら、素直に踊ってやると祐一は決めた。その中に、ほんの少しではあるがあの子供を助けたいという願いがあったのかもしれない。人としての良心など捨てたと思っていたが、まだ人間よりの死徒のようだと自分を嘲笑う。無論、助ける手段がなくなった時は手をかけることに躊躇はしない。
 突然の手の返しようになのは達は困惑したが、手伝ってくれるのならば文句はない。ヴィータだけは、信用できない様子だったが、はやてを助けるという目的の為に何も言わなかった。

「何か策はあるのか?」

「……まったく」

「ち、いきなり面倒になってきたぞ」

 目を細めて指を鳴らす祐一に、ユーノは慌てて話し出す。

「闇の書――いえ、夜天の魔導書については情報が少なすぎるんです。ぎりぎりまで調べたんですが、どうすれば取り込まれた主を救出できるのか」

「お約束で考えるのなら、あいつをぎりぎりまで弱らせてから呼びかけるとかが有効そうだが……ま、現実はゲームのようにはいかんだろうな」

 なのはのディバインバスター、ヴィータのシュワルベフリーゲン、フェイトのフォトンランサーが闇の書に向かって放たれる。両腕をかざし、防御魔法によって直撃はしたもののダメージはない。静かに言葉を紡ぎ、圧倒的な魔力をもって黒い塊を生み出す。

「闇に染まれ――」

 塊はすぐに破裂するように周囲を侵食する。広域攻撃魔法――避けきれないと判断した面々は全力で防御魔法を展開させる。魔法の使えない祐一は、ユーノの魔法によって難を逃れた。あれだけの範囲、下手に受ければ魔力はごっそり持っていかれていただろう。

「……魔法の使えない俺は、この中で一番の足手まといだな」

 攻撃が止んだのを見計らい、指先からガンドを放つ。祐一に使える、遠距離から攻撃できる唯一の魔術。先程のお返しだと言わんばかりに、マシンガンの如く雨あられとガンドが闇の書へと降り注いでゆく。シールドを張りそれを防ぐが、祐一の使うのは魔法ではなく魔術。さらにガンドは呪いの塊。

「ぐっ……」

 シールドで受けているというのに、体に何かが浸食してくるような感覚を味わう。非殺傷設定などない、当たれば怪我は免れないだろうガンドの攻撃。一瞬怯んだ様子を見せた闇の書に、好機とヴィータとフェイトが突撃する。

「くらえぇぇっ!」

「はぁぁぁぁっ!」

 ハンマーを叩きつけ、魔力で編まれた刃を振るう。三度防御を試みるが、展開が遅れたのか二人の攻撃が当たると同時に闇の書が吹き飛ばされる。しかし、やはりダメージを受けた様子はない。
 長期戦になれば不利になるのはこちら。闇の書は膨大な魔力量をもっている筈だ。無限は言いすぎだろうが、少なくともなのは達から見ればそう思えてしまうだろう。先の広域攻撃魔法も、とてつもない魔力を使っていた。

「おい管制人格! お前もはやての事が好きだったんだろ!? はやては、こんな事望むような奴じゃねぇ!」

「紅の鉄騎よ、もう遅いのだ……私は完成し、そう時間もかからず暴走を始める。なれば、我が意思がある僅かな時間を使い、主の願いを叶えるのみ。お前こそ、何故邪魔をする。その者達は、幾度となく騎士達の邪魔をした敵、仲間を傷つけた者達だ」

「……確かにこいつらは、あたしらの邪魔をしたよ。でも、今ははやてを助けるのを手伝ってくれる仲間だ。だから管制人格、いや闇の書。はやてを返してくれ!」

 悲痛なヴィータの叫びは、闇の書へは届かない。

「お前も、その名で私を呼ぶのだな……」

 流れる涙は止まらず、闇の書は彼女らが知るミッドチルダ式魔法の術式を編み出す。ピンク色の魔力光。その魔力光を持つ者は……。

「咎人達に、滅びの光を。星よ集え――」

「まさか、なのはのスターライトブレイカー!?」

「なのはは一度闇の書に蒐集されてる! その時にコピーされたんだ!」

 闇の書――夜天の魔導書の本来の目的は偉大な魔導師の技術を収集、研究するもの。その機構は改変された今でも残っていたのだろう。収束されている魔力の量に、祐一も冷や汗を流さざるを得ない。チャージしている今のうちに、全力で離れろというユーノの言葉に従い、各自全力で闇の書から遠ざかっていく。
 特筆してはいなかったが、魔法を使えない祐一が空を飛んでいるのには彼の足に大きな翼が生えているからである。自身の体を蝙蝠に変えることが出来るのならば、足に翼を生やし飛ぶことが出来るのではないかと考えた結果だ。
 なのはのスターライトブレイカーは距離を取れば威力が減衰していくという弱点がある。だが、至近距離で受ければ強固なバリアすらも貫通するほどのパワーを持っている。つまり、距離を取るしか対処法がないのだ。

『皆、大変! 結界内に取り残されてる民間人が二人いるみたいなの!』

「えっ!?」

「?」

 エイミィからの念話は、魔法使いであるなのは達にしか分からない。突然空中で静止し、驚くなのは達を眉を顰めて見る。

「なのは、その二人の位置もそこまで遠くない。私達で保護しよう」

「う、うん!」

 二人でどこかへと飛び去っていく。闇の書からかなり距離を取った場所にあるビルの裏側で、あの二人はどうしたとユーノに問い掛ける。民間人に被害が出ないよう、魔法での戦いをする場合は広域結界を張り自分達がいる場所を隔離するのだが、この結界内に民間人が二人残されたということを聞かされる。
 魔法は非殺傷設定とはいえ、魔力を持たない民間人がまともに魔法を受ければ怪我は免れない。それがスターライトブレイカーならば尚更だろう。

「運の悪い奴らだな。それをわざわざ助けに行くあの二人も、相当お人よしだ。放っておけばいいものを」

「フェイトもなのはも、二人とも優しいから仕方ないさ。それに、民間人をそのままにしておくわけにもいかないだろ?」

 アルフが不機嫌そうに言う。

「ふん……来るぞ」

「全員、全力で障壁展開!」

 魔力の収束が完了し、闇の書のスターライトブレイカーが発動する。地上に着弾したそれは、なのはが使うモノとは違い、拡散作用を持って周囲へと展開していく。再びユーノの防御魔法によって事なきを得ている祐一は、まるで核兵器の爆発だという感想を抱いた。
 魔力の光が周囲へと拡散していく様は、確かに爆発にも見えなくはない。

「く、うぅっ!」

 持てる魔力全てを注ぎ込んでいるかのように、防御魔法の維持を優先させているユーノ達。だが、ユーノの消耗が思った以上に激しく段々と押され始めた。まずい、と判断した祐一はユーノの右手を掴む。

「え?」

「魔法の理論は分からんが、魔力を送り込む事ぐらいは出来る。魔力が馴染むとは限らない、必死で耐えろ」

「は、はい……!」

 簡易的にだが、掴んだユーノの右手を介して魔力を送る。流れ込んでくる異質な魔力に一瞬苦痛の表情を浮かべるが、集中力が途切れれば防御魔法が消える。文字通り、必死でユーノは魔法の維持に努めた。
 スターライトブレイカーの照射が終わり、ユーノは魔力の消耗と苦痛から開放された反動で一瞬意識を失う。地上へ落ちそうになるユーノを片腕で支える祐一。その衝撃でユーノの意識が戻った。

「あ……すいません……」

「いや。良く耐えた方だ」

 再びユーノの飛行魔法が始まる。民間人を救いにいったあの二人は無事か、と一瞬考えるがこの程度で参るなら抑止力が選ばないだろうと判断する。事実、闇の書へ向かって飛んでいく黄色い閃光――フェイトの姿が見えた。バルディッシュを振るい、闇の書へと斬りかかろうとした瞬間、フェイトの姿が掻き消えた。

「フェイト!?」

 アルフの悲鳴。消えたフェイトが出てくる気配はない。死んだのか、それともどこかに飛ばされたのか。その思考も突如地面から突き出た触手によって遮られる。闇の書の暴走が始まったのだ。
 無数に出た触手は獲物である祐一達を捕らえようと蠢く。それをかわし、アルフとユーノはなのはがいると思われる場所へ向かう。

「くそっ……邪魔だぁぁっ!」

 ヴィータも自分を捕らえようとする触手をグラーフアイゼンで叩き潰し、粉砕していく。もう時間がないことに、焦りを感じているのだろう。暴走が始まったということは、はやての命も削られていくということ。このままでは、海鳴市だけではなくこの世界そのものが崩壊し、はやての命を喰らい尽くした闇の書は再び転生する。そうなれば、守護騎士として残っているヴィータも消え別の主の下に召還され、同じ事を繰り返すだけ。

「はやてぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!」

 闇の書に向かってヴィータが突っ込む。はやてという少女の為に戦うヴィータの姿に、祐一は少しだけ尊敬の念を抱く。世界の為でなく、家族を救う為。家族を救うことが、世界を救うことに繋がる。結果的にはそうなるのだろう。
 例えそれが抑止力に後押しされたのかもしれずとも。少なくとも、世界の為と大義を振りかざすよりかはよほどマシだ。

「まるでマリオネットだな」

 自分の今の状況を皮肉り、迫ってくる触手を掴み、握りつぶす。敵対の意志を見せた祐一に対し、触手の全てが攻撃を開始する。それを爪で切り裂き、先程と同じように握りつぶし、力任せに引きちぎる。だが、一向に数を減らすことのない触手に嫌気がさしたのか、高度を高くして闇の書へと向かう。
 なのは、ヴィータ、アルフの攻撃を受け続ける闇の書。スピードを上げて魔法を撃たれる前に一気に接近戦へと持ち込む。

「またお前か、吸血鬼」

「やられたらやり返す、当然の事だろう?」

「お前も、永久の闇へと沈め」

「生憎だが、吸血鬼は元より闇の中に生きる怪物だ。今更闇に沈んだところで何も変わらないさ……っ!」

 自虐を口にしつつ、祐一は魔法を使わせる隙を与えまいと掌打から肘打ち、膝蹴りと攻撃を緩めず動き続ける限り格闘を挑む。格闘技の経験など持たないが、吸血鬼となる前は退魔の家系で生きてきた。その過程で一通りの近接戦闘術は仕込まれている。
 吸血鬼となった今でも、その教えは忘れてはいないし忘れない為にも日々鍛錬だけは怠っていない。身体能力が人間以上とはいえ、戦う術を持たなければ宝の持ち腐れだ。
 闇の書も、守護騎士を束ねる存在だけあり近接戦闘の心得はあるらしい。

「主を取り込み世界を滅ぼす道具とは、また妙なものを作る奴がいたものだ」

 迷惑この上ない。ここまでやってまだ終わらないのなら、最初に宣告したように八神はやてごと闇の書を消し去った方が早い。転生機能を持つ闇の書相手にそれでは意味がないのだろうが、祐一にとってはあまり関係のないことだ。
 抑止力にとっても、世界が滅ぶよりも少数の犠牲で世界の滅びが抑えられるのなら問題はないはず。いい加減相手をすることにも疲れてきたのだ、そう覚悟を決め、

『外の人、聞こえますか?!』

 聞き覚えのある声で漸くかと不機嫌そうにため息をこぼした。

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実験作十二作品目。







 突然ですが、家がなくなりました。

「なんでだろー、なんでだろー」

 取り出したギターでその無情を歌ってみる。でもそうしたところでデジョンなされた我がマイホームがレイズされるわけでもなし。く、くそう、一体誰だ僕の愛の巣を破壊しちゃってくれたあんちくしょうは。
 一体どこで寝ればいいんだ。野宿とか嫌ですよ?(生命の危険的な意味で

「こんにちは、祐樹君」

「誰ですか今現在絶賛落ち込み中の僕に話しかけるファッキン野郎は……って、フィーバーさんじゃないですか」

「永江衣玖です。地震が起きます……というか、起きました。そのせいで貴方の住居が崩壊したみたいです」

「遅いよっ!?」

 そういやさっき地震あったけどっ。フィーバーさん、地震を伝えるのは起きる前にしてほしい。起きた後に言われても、僕には家が崩壊した事実しか残りません。
 お財布とかは持ってたけど、家財道具とか全滅ですよ。服とかも!

「すいません、総領娘様が」

「あ の 胸 な い て ん こ か !」

 僕の怒りが有頂天、もとい怒髪天。あの胸ないてんこめ、人様のお宅をデジョンしてくれやがりましたか。これは許せん、もうあまりの仕打ちなのであの胸ないてんこには陵辱の限りを尽くしてやることにする。頭の中でね。
 実際にやると返り討ちにあうし。

「本当にすいません」

「フィーバーさんいい人すぎて僕泣けてくる。それで、僕の家をデジョンしてくれた本人様はどちらに?」

 でじょん? と首をかしげるフィーバーさんがちょっと可愛い。結婚してくれないかなー、ほんと。

「それと、永江衣玖です。総領娘様は今も天界におられます」

「謝罪しにくる気もない様子に僕の怒りがマッハです。ちょっとフィーバーさん、僕を天界まで連れてって頂戴」

「ですから永江衣玖です。本来なら天界に連れて行くのは……まぁ、今回は総領娘様が暇だからといって起こした地震のせいでこんなことになってしまいましたし」

 なんてこった、暇だから地震起こすのか。ナマズも大忙しだよ、そんなだと。いや、それよりも僕が被った被害(家、家財道具、服その他)分は色々と毟り取らなければ。

「本当にすいません」

「フィーバーさん、結婚してください」

「永江衣玖です。それと、私などではとても伴侶としては力不足かと」

 その優しさを分けてくれるだけで非常に嬉しいとです。この幻想郷でその心遣いは大変貴重です。みょんみょんとかきもけーねさんとかも優しいけど。フィーバーさんの、この包容力の高さ。
 戦闘力は五十三万を超えるね。

「お、何、天界いくの?」

「む、また沸いてきたなウォーターメロン」

 第一話以来の登場ですね。

「ボウフラみたいに言わないでよ。って、ありゃ……こりゃまた派手に壊れたねぇ」

「胸ないてんこの気まぐれで僕の家が崩壊した」

 しかし、本当に困った。このままじゃ本当に野宿せざるをえない。外の世界ならネットカフェとかそういうとこに一日ぐらいなら仮眠は取れるけど、ここはそんな便利なものはない幻想郷。外の世界が江戸時代なら、ここは原始時代。それは言いすぎか。でも、ここで野宿なんかしたら美味しく頂かれてしまう。
 どうしよう。腋巫女とかうー☆とかのとこにお邪魔させてもらおうかな。じゃないと僕の生命がマッハでピンチ。

「んー……ねぇ、竜宮の使い。アンタんのとこの天女達借りれる?」

「えぇ、構いませんよ。今回の件は総領娘様が一方的に加害者ですし」

「うし。安心しなよ祐樹、アンタの家は私らが建て直してあげる」

 後光じゃ、ウォーターメロンの背後から後光が射しておられる。神様仏様鬼様と拝み倒す。拝まれるより今度、つまみかお酒でも持ってきてくれと言われた。三度の飯よりお酒が飲むのが好きなウォーターメロンめ、そこにいくらでも酒が湧いてくる瓢箪があるのにまだ欲しいのか、いやしんぼめっ。
 とりあえずお礼としてウォーターメロンに最強の幼女と書かれたプラカードを渡す。投げ返された。

「でもなんで? 自分で言うのもなんだけどウォーターメロンが僕の家建て直してもなんの得にもならないと思う」

「損得じゃないさ、ただ友人が困ってるのに手を貸さないのは後味が悪いってだけ」

 何、このいい人。あ、鬼か。幻想郷もまだまだ捨てたもんじゃないね、人間よりも妖怪とかの方が優しい気がして

 いや、そんな事ないか。うー☆とかマッドさんとか黒いのとかは僕に優しくなかった。優しさなんて幻想なんだよ。きっと幻想入りしてるに違いない。

「でも差し出された好意はじっくり疑ってから頂くよ」

「素直に受け取れないの……?」

 だって幻想郷には平気でブラフかけてくる奴らが多すぎるから、まずは疑うことからはじめないといかんのです。あと、相手から優しい言葉をかけられたら必ず疑えってばっちゃが言ってた!

「嫌過ぎるよそのおばあちゃん」

「いやまぁ、嘘なんだけどね」

 ろ、ロープロープ! 首絞めは本気で死ねるからやめて。ウォーターメロンにチョークスリーパーをかけられ、必死で地面を叩いてギブアップを知らせる。どうせされるなら、おっぱいマイスタとか中国とかきもけーねさんにされたいとです。
 あと、フィーバーさんも意外といい体してると思うんだよね。ぱっつんぱっつんだし。

「何やらふしだらな視線を感じます」

「祐樹えろいからねー」

「男なんてそんなもんだよ! もりりんもきっと枯れているように見せかけて、中身はえろえろに違いない」

 むっつりだね、もりりん。そういや、もりりんのとこですんごい古臭い剣を一回、ぱくってきたことがあったんだけど、あの時は怖かった。温厚なもりりんがそれはもう、鬼のような形相で追いかけてきたからね。
 それ以来、あれには触れないようにしてる。話題には出すけど。

「あの道具屋が? ないない、ありゃ本当に枯れてるよ。枯れ枯れだね」

「森近さんのそういうところが、想像できません」

「この僕ともりりんの態度の差。ひどいっ」

 悔しい、でも感じちゃう……!

「まぁ、それはともかく。フィーバーさん、とりあえず天界つれてって」

「永江衣玖です。萃香さん、私は祐樹君を天界へと連れて行きます。すぐに他の天女達をこちらに向かわせますので」

「どうせなら私も行ってお酒飲みたいんだけどねぇ。いいよ、待ってる」

 フィーバーさんと一緒に天界へと向けて出発。僕の家の残骸に背を預けて、ウォーターメロンがまた酒を飲み始めるのが空中から見える。
 いつか急性アルコール中毒になるんじゃ、というかもうなってても不思議じゃない。一度懲りればいいと思う。たまに僕にまで酒を無理矢理飲ましてくるし。

 さて、胸ないてんこに文句のひとつでも言ってやらねば。あの帽子の桃、引きちぎってやるぞなもし。



 すぱっと書くつもりがなんか難産に。お腹を痛めた子なので、かわいがってやってくださいまし。

誰もが忘れていたリリなのクロスモノ。

「……ふん」

 つまらなさそうに、しかしどこか苛立ちをこめて祐一は息を吐く。十二月二十四日、世間ではクリスマスイブで賑やかな日。だが、祐一の目の前ではそんな世間の状況と遠くかけ離れた出来事が起こっている。
 闇の書の主、八神はやてを救わんとする守護騎士達と、守護騎士たちの行動を止めるべく動いていたなのはにフェイト。それが病院の屋上にて対峙していた。

「はやてとかいう子供が闇の書の主だと気付いたのか」

 それにしても、何もこんな日にと呟かざるをえない。人付き合いのない祐一だが、クリスマスの二日間はバイトを休み、どうせ大した進展もないだろうと考えていたのだが、現実は非情である。
 なのは達は八神はやてが闇の書の主だと気付き、守護騎士達と相対している。その様子を祐一は、少し離れたビルの上から眺めていた。

「始まったか……」

 先に仕掛けたのは守護騎士達。戦闘が始まると同時に、祐一はビルを移動する。戦闘をもっと近くで見届けるために。
 空中で放たれる魔法と魔法のぶつかり合い。ビルの屋上では、シグナムとフェイトが互いの武器で近接戦闘。

「あなたは……」

 シグナムの後方に控えていたシャマルが、近づいてくる祐一に気付く。それに答えることなく、ビルのフェンスの上に降り立ち、二つの戦闘を静かに眺める。やはり、魔術師とは遠くかけ離れた戦闘光景だ。どちらかといえば、聖杯戦争におけるサーヴァント同士の戦闘と言った方がしっくりくる。
 知識としてゼルレッチから授けられただけで、実際にその戦闘を見たことはない。教会の代行者と自分達の戦いの延長線上だと思っておけ、ということを聞いたぐらいだ。端から見れば、自分達の戦いもこういう風に見えるのだろう。
 シャマルは何もせず戦闘を眺め続けるだけの祐一を気にしながらも、シグナムとフェイトの戦いを見守る。

「……?」

 戦闘を眺め続ける祐一だが、何か違和感を感じた。空に視線をこらすが、特におかしなところは何もない。相変わらず人払いの結界らしきものが張られており、人の気配がなくなのはとヴィータという少女が戦っているだけ。
 だが、違和感は消えず。祐一の魔術師としての知識が訴える。何かが起こる、と。





「本当の、な、まえ……?」

 高町なのはの放った言葉に、ヴィータは固まる。グラーフアイゼンを握る手は無意識に力み、その言葉がずっしりと重くのしかかる。
 闇の書――それの本当の名前。一体、何を言っているのか。自分達はずっと長い間、闇の書と共に転生を繰り返してきた。だから闇の書が本当の名前のはずだ。

 でも、本当に? なら何故こんなにも心がざわつく? 

「……うっせぇ、それがなんだってんだ。あたしらは、はやてを助けたい。それだけだ!」

 デバイスを振りかぶり、ヴィータはなのはに向かって突撃する。

 その言葉に嘘はない。守護騎士達の目的は、自分達の主である八神はやてを救うこと。そして、ずっと一緒に暮らして幸せになる。
 それを叶える為に、自分達は闇の書の蒐集を開始したのだ。今更、やめられるはずもない。もう、完成は間近なのだ。はやてが真の主になり、そして――

「なんで……えっ!?」

 悲痛な顔で、なのははヴィータを迎え撃つ為にレイジングハートを構えようとした。だが、周囲に突如光の帯が現れ、彼女を拘束する。
 拘束魔法である、バインドだ。

「ば、バインド……また!?」

 展開させていたアクセルシューターも消え、なのははもがく。バインドは魔法である以上、そのプログラムを解除しなければ解くことは出来ない。力技だけで拘束を破ることは出来るかもしれないが、まだ幼い少女であるなのは、それをやれというのは酷だろう。

 いくら地球出身の中で天才的な魔法の使い手とはいえ、彼女はまだ子供なのだ。

「なのは!」

 レヴァンティンとバルディッシュの刃が離れる。シグナムから距離を離し、フォトンランサーを生み出して周囲に視線を凝らす。一部始終を見ていた祐一も、そしてフェイトと戦っていたシグナムも、この場にいる"招かれざる客"を探している。もっとも、祐一も"招かれざる客"なのだが。
 それはともかく、この場にいるのは十中八九あの仮面の男。こちらを排除する意志を見せていたのだ、自分がここにいる以上仕掛けてくるかもしれない。奴にとって祐一は邪魔者以外の何者でもないのだから。

「―――そこ!」

 虚空に向かってフォトンランサーを放つ。本来なら何もない空間に放たれたその攻撃は空の彼方に消えていくはずだが、不自然に掻き消える。そして、その攻撃が消えた場所の空間が僅かにだが歪んでいるのが祐一には見えた。
 すぐさまそこに向けて、呪いの塊であるガンドをマシンガンのように連射する。

「くっ……!?」

 空間が歪み、そこから仮面の男が現れる。やはり隠れて様子を伺っていたらしい。これ以上邪魔になる前に始末すると決断し、地を蹴り空を駆けて仮面の男へと向かう。首の骨程度ならば少し力を入れるだけで簡単に折れる吸血鬼の手が伸びる。
 だが、それを妨害する要素が現れる。突如横からの衝撃を受けて、祐一の体は地上へと落ちてゆく。

 ――蹴られた。地上へと落ちながらそれを知る。どうやら仲間がいたらしい。その可能性に至らなかった自分の不甲斐なさに、祐一は怒りを覚える。

(チ、ぬるま湯に浸かっていたせいか、平和ボケしたか……むっ?)

 空中で体勢を立て直し空を見上げた祐一は目を細める。空中にいる仮面の男"達"。現れた仲間は、仮面の男と瓜二つ……それこそ同一人物と言っても良いほど似ていた。

「あっ……くっ!?」

「何!?」

「み、見境なしかよ……っ」

 フェイト、シグナム、ヴィータ、シャマルと次々にバインドで捕らえられていく。無論、それは祐一も例外ではなく周囲に光の帯が現れ、祐一を捕縛するべく範囲を狭める。

「図に乗るなよ、人間が!」

 そのまま捕らえられるわけもなく、祐一は自身にかけられたバインドに対して力で対抗する。魔法の原理は未だ分からないが、吸血鬼の力をもってすれば破壊できないはずはない。
 吸血鬼もランクは低くとも神秘の塊。神秘はそれを上回る神秘にて対抗できる。祐一にかけられたバインドは、咆哮と共に吸血鬼の力で無理矢理引きちぎられた。

「……化け物め」

 忌々しそうに呟く仮面の男の一人。だが、ダメージがないわけではない。この世界の魔法は魔力に対してダメージを与える。先ほどのバインドを破った時も、魔力が僅かながら削られた。魔法を受け続ければ魔力切れを起こす可能性もある。
 これ以上魔法を使われる前に仕留めると祐一は意識を切り替えた。自分の目的の為にも、あの二人は邪魔だ。
 再び空へと上がり、二人の男の息の根を止める為に爪を伸ばす。

「何故、我らの邪魔をする吸血鬼……っ!」

 繰り出される爪での攻撃を仮面の男達は避け続ける。攻撃を受ければ致命傷は免れない。非殺傷設定での戦闘ではなく、正真正銘命を賭けた殺し合い。

「貴様には、何の関係もないはずだろう……っ?」

「あぁ、そうだな。だが……お前らがいると目障りだ。だから死ね」

 簡潔に述べられた理由。なるほど、確かに分かりやすい。自分達もこの吸血鬼が障害になると判断し、初めは排除しようとした。しかし、その後一向に現れる気配もなくもう構う必要もないと思っていたのだが……やはり、不確定要素は取り除くべきだった。

「我らの目的の邪魔はさせん。大人しくしていてもらおう、吸血鬼!」

 時間をかければ守護騎士達にバインドを外される。その前に多重バインドで動きを取れないように拘束する――仮面の男達はそう結論を出し、一人が祐一をへと向かう。もう一人は後方から魔法による援護。
 攻勢へと出た二人に動揺もせず祐一は接近戦を挑んでくる方を攻撃する。魔法が飛んでくるも、それを避けつつ、時に回避しきれないと悟れば無理矢理無効化。後者に関しては魔力を削られるのでできればやりたくないのだが……直撃よりはマシなのだ。

(クソ、鬱陶しい。こいつら、一体何が目的だ……?)

 ここにいる全員を拘束し、何を為そうというのか。少なくとも真っ当なことではないことは確かだが、所詮自分には関係ない。だが、自分に敵対した以上は倒すだけ。
 倒した後は、勝手に戦闘を再開して勝手に終わればいい。自分の目的は"魔法というものの性質を見極めること"だ。

「いい加減死ね、魔術師共……!」

 苛立ちをこめて呟き、自分への肘打ちを捌き鳩尾に向けて拳を叩き込む。めり込む拳の威力は凄まじく、男の肋骨をいくつか砕いていく。衝撃は止まらず、男は吹き飛ばされた。

「がはっ!」

(なんだ? 妙な手応えがしたが……)

 男に対し違和感を覚える祐一。その一瞬の油断が明暗を分けた。バインドにより再び拘束され、抜け出す暇も与えられず二重、三重、四重とバインドを強固に重ねがけしていく。

「くっ……!?」

 流石にこれだけのバインドを力技で破るのは容易ではなく、抵抗するものの祐一は捕まってしまう。バインドで捕まった面々が仮面の男達によって集められる。

「邪魔は入ったが……ようやく、我らの目的、果たすことが出来る」

 自分達の前で浮かぶ闇の書を手に仮面の男は一言、"蒐集"と口にする。苦痛の声と共に、自身のコアを蒐集されシグナム、シャマルとその姿を消していく。悲痛な声で二人の名を叫ぶヴィータだが、バインドは外れない。

「なんだよ、なんなんだよお前らぁぁぁあああああ!!」

 咆哮するヴィータを、なのはとフェイトは悲しそうに見つめる。祐一は無表情だが、自分を拘束しているバインドを外そうと抵抗中だ。しかし、何重にも重ねられたバインドはそうそうには解けない。一寸の隙間もなく、自分を拘束する。
 苛立ちと怒り。視界が赤く染まる。

(チ、俺にはなんの関係もないんだが。だが、こいつらの行為は気に入らない)

 奥歯をかみ締める音。今また、咆哮とともにやってきた守護騎士達の一人、ザフィーラが捕らえられ闇の書へと吸収されていく。その痛みと無念さの断末魔が、ヴィータの心を傷つける。

「ひどい……ひどいよ。あの人達、一体なんで……っ」

 自分達を閉じ込めている結界の中で、なのはは泣く。状況はさらに進み、ヴィータをバインドで捕らえ仮面の男達はなのはとフェイトの姿をまね、魔法で八神はやてを屋上へ召還する。何をするつもりか知らないが、このまま閉じ込められたままでいる気は祐一にはない。

「ぐっ、ぁあああああああああああああああ!!」

「っ……!?」

 気合の咆哮。千切れ飛ぶ全てのバインド。祐一達を閉じ込めていた結界は、その勢いで振るわれた両手により崩壊。それに気づいた偽なのは達は驚き振り向く。
 だが、その行動が完全に済む前に祐一は仮面の男が扮した偽者のなのはを捕まえる。

「そんなに魔力が欲しいのなら、自分達のを使えばいいだろう?」

「貴様、まさか!?」

 にやりと笑い、祐一は闇の書を偽なのはに近づける。蒐集対象を見つけた闇の書は、偽なのはのリンカーコアから魔力を奪い始めた。
 魔力を吸い取られ姿を維持できなくなり、偽なのはは仮面の男へと戻る……はずだった。

「……なるほどな、あの姿も借り物だったわけか」

 祐一の目の前にいるのは猫の耳に猫の尻尾をつけた女。魔力を吸い取られ、意識は既にない。

「ロッテ!」

「となると、そっちも借り物の姿か。だが生憎と、コイツはもう満腹らしい」

 闇の書が祐一の手から離れ、はやての元へ行く。シグナム、シャマル、そしてザフィーラという最愛の家族を失い、今まさにヴィータさえも失いかけたはやての目は虚ろ。
 その頬を、涙が一筋伝う。座り込むはやてを中心とし、屋上に魔法陣が描かれる。

「はやてちゃん!」

「はやてぇ!」

 なのはとヴィータの叫びは届くことなく、はやての姿が光の中に消える。闇の書――かつては夜天の魔導書と呼ばれたロストロギア。それが今魔力を得て、再びここに完成する。

「――――主の望みのままに」

 現れる闇の書の管制人格。銀の長髪を風に揺らし、管制人格は涙を流す。祐一は捕まえたままであったリーゼロッテを偽フェイト……変身をといたリーゼアリアへと投げる。

「完成すると同時に宿主を乗っ取る、か。まともな代物じゃないのは確かだな……っ」

 自分へと放たれる魔法を回避する。闇の書の管制人格は、涙を流したまま祐一へと手を向けていた。

「……」

「俺も敵、か。まぁいい、それが望みなら相手になってやる。宿主ごと死んでも文句は言うなよ?」

 敵対するものには容赦はしない。それが例え、女であろうと子供であろうと。

 聖夜の夜、吸血鬼と悲しき魔導書の戦いがはじまろうとしていた。

実験作十一作品目

 スイーツ巫女にフルボッコにされたその日は、守矢神社に泊まった僕。また残機が減ったような気がするんだけど、いつになったら1アップアイテムが出てくるんだろう。じゃないと僕の残機数、本当に0になっちゃうよ? 人生にはやり直しはないんだよ?

「起きてますー?」

「きゃあえっち!」

「初心なネンネじゃあるまいし、何を恥ずかしがってって何をやらせるんですか!」

 この子も結構ノリが良いやね。惰眠をむさぼる主人公の布団を引っぺがして起こしてくるとか、それなんてギャルゲですか。これがエロゲの分類に入るなら、朝の生理現象からのチョメチョメに入ったりとかするね。
 そう、それはあたかもご奉仕のような。

「スイーツ巫女の奉仕と聞いて」

「ほ、奉仕ってなんですか!? 何させられるんですか!?」

「そりゃもう、ぐっちょぐちょな」

「いいいいいい言わなくていいですっ!」

 まっかっかのスイーツ巫女。まさにおりんご様。こんなに赤々としたりんごはさぞ、美味しい蜜が溢れることでしょうと言ったらバックドロップかまされた。

「え、えっちなこと言うの禁止ですー!」

 そう言って走り去っていく。うーん、スイーツ巫女がなんかすごい可愛いぞ。そういう方面の話に弱いのだと知り、暫くはこれでいじろうと決めた。その度にあんな反撃を食らってると、変な趣味に目覚めそうだけど。

「また早苗をいじめてたの? あんまりやりすぎると神奈子に怒られるよー?」

「ちょっとえろえろな匂いをさせる会話をしただけだよ! スイーツ巫女はもう少し耐性をつけるべきだと思う」

 でも個人的にはつけられると面白くないけど。スイーツ巫女はあのまま綺麗なままでいてほしいと僕は切に願う。
 幻想郷の癒し的な意味で。

「あー、早苗はそういうのに弱いからね。あと、ああみえて神奈子もそっち方面は弱いんだよね。私はほら、人妻だから!」

「年増か」

 鉄輪でぶん殴られそうになった。なんという殺人。神がそう気軽に人間を殺そうとするんじゃありませんよ。

「女はいつだって心の中は若いもんなんだよ? 年増とか言ったら怒られるんだから」

 けろたんは笑って言ってるけど、目がすんごい怖い。ハイライトないのとか勘弁。僕はほら、死んだ魚のような目であってハイライトはあるから。
 布団をたたんで、スイーツ巫女が準備した朝食を貪ることに。

「味噌汁おいしいでござる。ご飯もおいしいでござる。そしてここで、お約束のちゃぶ台返しをですね?」

「だめー!」

 ぐっとちゃぶ台を掴んだけど、スイーツ巫女に阻止される。まぁ、やる気はなかったけどね。……ほ、ほんとだよ?

「ごちそうさまですた」

 たらふく食ってお腹いっぱい夢いっぱい。ついでに眠気もいっぱいぱい。しかし、今日も泊まるわけにはいかないので当然帰るよ!

「祐樹君はもう帰るんですか?」

「自分の家で布団とイチャイチャしたいから帰る。あと、あんまりいると迷惑かかるからね」

 そういうとすごい意外そうな顔をされた。ど畜生、僕がまともなこと言ったらおかしいか。いらっ☆としたので弾幕とも言えないような霊力の塊を出して、猫だましをかます。陰陽弾を食らえー!
 パーン☆と炸裂し、光の奔流がスイーツ巫女達三人と僕の視界を焼き尽くした。

「しまった、眼を閉じるのを忘れていたでござる。スタングレネード痛い!」

 自爆で僕の目がやばい。うおっ、まぶしっ! 白く塗りつぶされた視界で何も見えません。純白の世界が広がり足をすべらせてすっころんだ。
 なんて危険な技だ。ゲームとかで閃光手榴弾が役に立つのか疑問に思ったりしたけど、これは効果的すぎる。今度C○Dとかでちゃんと使おう。

「い、痛い……」

「自業自得だろうに。というか、こっちも目がおかしいよ。いきなり何するんだい」

 目が見えないので確認できないけど、何か硬いものを押し付けられている。はっ、まさかオンバシラさんがついに僕を亡き者にしようと……!?

「それは私の御柱だ」

 つんつくりん。オンバシラさんの御柱が僕をつついてくる。

「僕にそんな趣味はないよ!」

 貞操の危機だ。神様の慰み者にされるとか、ついに僕のハジメテは散らされるのか!

「私にだってないさね。たくっ、ほら、さっさと起きなさいな」

 まだ目がしばしばする。回復してきた目の最初に映ったのは、いまだ悶えているけろたんの姿と、その声に慌てるも自分もまだ回復しておらず、おたおたするスイーツ巫女の姿。
 あ、滑って転んで悶えた。

「スイーツ巫女かっこわる(笑)」

 オンバシラさんが後ろからからみつき、スイーツ巫女から御幣が飛んできた。こう、すこーんと。漫画みたいに僕のおでこに突き刺さったので、痛い。

「うちの早苗の悪口を言うのはこの口かい?」

「ひたひ、ひたひ。ふぉくのふひをひっふぁらないで」

 そんなに広げられたら、僕恥ずかしい……! やめて、そんなの僕のミステリーゾーン(口の中)を見ないで!

「なんで口広げられてるだけなのに、そんなに恥ずかしそうなんですか」

「スイーツ巫女が袴の中を見られるのと同じ原理」

「セクハラですか!」

 こんなとこ見られるのなんてセクハラと同じに違いない。これはオンバシラさんも剥くしかないフラグ!
 ……なんか萎える。

「……」

「ノーノー、目潰しダメ。目潰しは協定違反ですよ?」

 オンバシラさんが怖い。笑顔だけど目は笑ってないし、額にミミズが走ってる。え、青筋だって? サーセンwwww

「神奈子ー、もう面倒くさいからさっさと開放したらー?」

 めんどくさいとはこらまたひどい。けろたんはいつからこんな反抗的になったのやら。


 けろたんには後日、二十匹ぐらいのオス蛙をプレゼントした。どれも繁殖の為に雌を求めてる性欲の権化を厳選しますた。もう少しで孕むところだったよとはけろたんの弁。
 ちぃ、いっそ孕んでしまえば良かったものをと冗談で言ったら池に沈められたぞなもし。


「たく……もう少しアンタは女心を勉強するんだね」

「オリ主が女心を勉強するとか、そんな事したら僕がただのハーレム作る話になりますよ?」

『ありえない』

 なんというプリンセス用語にジェスチャー。こいつら、知っていてやってやがる。恐ろしい、某えろいゲームをやっている巫女+神様二人が恐ろしい。

「というか、オリ主って何だい」

「本来はいるはずのない存在。無数の二次創作作品の中にいる、イレギュラー的存在です」

『?』

 首を傾げられる。やっぱり、幻想郷にオリ主なんて概念はないですよね。でもこの人ら、外の世界の住人だったんだから知ってそうなもんだけど。
 ……意外と認知度低いのかな、オリ主。

「ええい、なら僕が無数にいるということでいいよ!」

「それはひどい」

「とってもノーサンキューだね。昨日も言ったけど祐樹が一人でも苦労するのに、何人もいたら色々終わっちゃうよ。主に幻想郷の住人の胃とか」

 僕の寿命はマッドさんによって確実に縮んでるけどね。蓬莱の薬あたりでもパクろうかな。水で薄めたら効果も半減とかしそう。

「失礼な人たちめ。僕は帰るよ、いとしい布団ちゃんが待ってるからね」

 明日はお仕事の日です。今日はだらだら一日あさ漬け、じゃなくてお休みする。働くのはいやでござるだけど、お金ないと生きていけないから頑張るよ。

「人里まで送ります」

「スイーツ巫女が僕から離れたくないと申す」

「あはは、冗談はほどほどにしてくださいね?」

 目が笑ってませんよ。そうしたら冗談です、と逆に笑われた。スイーツ巫女の癖に生意気な。

「早苗、気をつけるんだよ、襲われるかもしれないし」

「襲わないよ! 好き好んで死亡フラグを誰が立てますか」

 幻想郷の住人に襲い掛かれば、まず間違いなく撃退されてぴちゅる。もう僕の残機は残り僅かなんですよ? ここいらで一機アップぐらいしたいとこ。キノコはどこだ。

「またメダロットしにくるよ! 次来る時までに僕のメンバーに勝てる奴考えておきな! フルボッコにしてやんよ!」

 現実世界ではフルボッコにされてやんよ!

「はいはい。気をつけて帰りな」

「今度また宴会する時は呼ぶからね。その時は何か持ってきてよー?」

 貢物の催促とかなんつー神様どもだろう。まぁ、たまにはいいか。オンバシラさんとけろたんと別れ、スイーツ巫女に人里まで送ってもらう。
 平和っていいなー。たまに異変とか起きるけど、僕は巻き込まれないように頑張って引きこもるでござる。

 でも、良く弾幕ごっことかに巻き込まれて吹き飛ばされるけどね。そろそろ訴えるべきか。



 んー、文章の練習になってるのか怪しい。カオスとは程遠いから面白みがあるのか……。あれか、やっぱ自分にはほのぼのとかシリアス系の方が性にあってるのかね。
 でも、とりあえず色々書いてみるだけ書いてみる。

神薙 祐樹

  • Author:神薙 祐樹
  • 1987年3月11日生まれ。
    うお座のAB型。
    現在は雇われ店長としてブラックな職場で日々働いて時間を失っています。

    RO現在休止中。Mimir鯖所属、主に影葱。ガンダムオンライン、ガンダムジオラマフロントにはまってます。

    SS書く時間がほしい。
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